Ecovillage
地球環境問題を包括的に指摘したバイブルとも言える書『成長の限界』。
1971年ローマクラブは「人類の危機」レポートと題してこれを発表した。
アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)のデニス・メドウズ博士を中心とした研究チームが、コンピュータ・シミュレーションで弾き出した結論は衝撃的だった。
人口増大や経済成長を意識的にコントロールして急速にペースダウンしない限り、21世紀の半ば近くに人類は深刻なカタストロフィに直面する。
世界人口は半減し、工業はストップする。
技術開発や新たな資源・エネルギーの発見によってこの危機を回避することはできない。
地球環境は有限であり、自然の再生能力には限界があるという当たり前の事実は決して動かすことはできないと指摘したのだ。
「われわれは、地球という天体のもつ物理的制約に関する現在の知識にもとづき、成長の局面が今後100年続くことはできまいと考えている。
くり返すが、システム固有の遅れのため、もしも世界社会が、この制約がまちがいなく明らかになるまで待つとしたら、手遅れとなる」
「これらの問題を解決するためになんの行動もとらないということは、強烈な行動をとることに等しい」
警告にも関わらず、このレポートから40年近く経過した今日においても、未だ人類は意識的に経済成長をコントロールすることができない。
例えば世界中の人が日本人と同じ生活をするには、地球は2・3個必要だと明らかになっている。
今や『成長の限界』が指摘したカタストロフィの時期は、目前に迫っている。
どうすればいいのか?
先日来日したデニス博士は、あらためて以下のように訴えた。
「『成長の限界』では、早く行動するほうが危機回避のためのコストははるかに安くなると指摘したが、残念ながらこの40年間で工業生産は倍になった」
「これからの20年で人類が経験することは過去200年に経験した変化よりもはるかに大きい」
「これまでと同じフレームで考えても答えは出てこない。
オイルピークは恐らく2006年に既に迎えている。
戦後60年余りの間に、人類が何千年の長い歴史を通じて使用してきた石油総量のうち、90%を消費した」「汚染、地下水の枯渇、土壌の劣化、貧富の格差などの問題は、これまでと同じフレームでは解決不能」
『成長の限界』では、埋蔵資源量を予測よりはるかに大きく見積もったり、省エネや汚染除去の技術開発を想定以上に設定したりと、様々なパターンのシミュレーションを行ったが、どのパターンでもネックとなるのが汚染の問題であった。
つまり、地球環境の再生能力を上回る経済成長を続けることは不可能なのである。
ところがやっかいなのは、こうした将来の危機に対して、とりわけ幾何級数的に変化して迫りくる危機に対し、人間の認識能力は実に貧弱なことだ。
人間は幾何級数的変化を理解できない例として、彼はこんな質問を投げかけた。
「1枚の紙を50回折るとその厚みはどのぐらいになると思いますか?」
私を含めて「う~ん、1メートルぐらいかな」と予想する人は多いと思うが、答えはなんと地球と太陽の距離。
『成長の限界』でもフランスの子ども向けなぞなぞを紹介していた。
「あなたが池をもっていて、その中で水蓮を育てているとする。その水蓮は、毎日2倍の大きさになる。
もしその水蓮がとどめられることもなく成長するならば、30日でその池を完全におおい尽くして、水の中の他の生物を窒息させてしまいそうだ。
しかし、長い間、水蓮はほんの小さなものだと思っていたので、それが池の半分をおおうまで、それを刈ることにわずらわされまいと心に決めていたとする。
いつその日が来るだろうか。答えはもちろん、29日目である。あなたは、あなたの池を救うのに1日しか残されていないのだ」
まさに幾何級数的な変化は、気付いた時にはもう手遅れなのである。
長期的な視点に立った対応しか、これに対処することはできない。
デニス博士は続けた。
「時間軸を長期的に設定しないと気候変動に対応できない。
政治家が次の選挙までしか考えないのでは無理」「今行動し投資をしてもすぐに結果が出てくるものではない。成果が出るまで我慢することが必要」
「40年前のシナリオでは2010年から2050年までに大きな問題が生じるケースが示された。
これを持続可能なシナリオに変えるには、技術革新だけでは不可能」「日本の江戸時代は持続可能な社会だったが、もちろんその時代に戻ることはできない。
しかし習慣を変えることは可能。簡単ではないし、最初は居心地が悪い。
まずはアクションを起こすこと。試行錯誤でいい」「情報を示す的確な指標を提示することはとても大切。
例えばGDPの何%がエネルギーに費やされているのかなど」「GDPで幸福を計ることは止めたほうがいい。
日本は人口減少を嘆くのではなく新しいチャレンジが可能」「人と人とのコミュニケーションの核心は行動を変えること。人から聞いたことはすぐに忘れる」
結局は一人一人がどう行動するかがカギなのだ。
ところで、メドウズ博士の講演にはスーツ姿のたくさんのビジネスマンも参加し、会場も東京都心のビルのなかだった。
企業活動にとって環境問題が無視できないレベルに達していることを伺わせた光景だ。
しかし私には、メドウズ氏の講演内容とこの会場の雰囲気がどうにもミスマッチだった。
本当に人が変わるコミュニケーションを目指すのなら、かけがえのない自然を身体で実感できるような素晴らしい里山とかで、スーツを脱いで膝を交えて議論するほうがいい。
その意味で私は、『スモール イズ ビューティフル』においてシューマッハーが述べた、『成長の限界』の合理主義的アプローチではカバーしきれないもっとも核心的な指摘を、常に忘れずにおきたいと考えている。
「生き残りが問題であるならば、あらゆる自然資源のなかで最も貴重なもの、つまり人間の頭脳の維持とさらには発達について議論がおこなわれると期待してよいであろう。
ところが、その期待は裏切られている。『生き残りのための力』はあらゆる自然資源―金属、エネルギー、水、野生動物等々―を論じているが、創意、知性や知力のような、非物質的な資源はまったく扱っていないのである」
2008年5月、富山県富山市(旧大沢野町)の土(ど)集落で有畜循環有機農業を営む農場「土遊野」を訪れた。
http://doyuuno.net/
食の安全・安心が求められるなか有機農業はかなり普遍的となったが、この農場のすごいところはほぼ自給自足できるような循環型農業に取り組んでいること。
農場を営んでいるのは橋本秀延さん・順子さんご夫妻。
土集落は限界集落で、ここに定住しているのは橋本さん一家だけ。
しかし「限界」とのネガティブな言葉とは裏腹に、新緑の自然がまぶしいほどに美しいまるで桃源郷のような場所だ。
午前9時半、到着と同時に早速やぎの乳搾り体験。
やぎの乳はパンパンに張っており、急いで搾ってやらなければ可愛そうだ。
あっという間に2リッタービン2本が一杯となる。
ちなみにこのやぎは農場の空き地に放し飼いとなっている。
のんびりと草を食べているが、ほぼそれだけで毎日これだけの乳が出るのだからなんと効率的。
しかもその晩の食卓で味わった手作りカッテージチーズの美味しかったこと。
汚染されていない土地に生える草を食べているからほとんど臭みもなく、かつ濃厚。
一家に一頭やぎを飼えば乳製品に困ることはないと実感できた。
土遊野では平飼いで800羽養鶏している。
その卵の採取作業をお手伝いしたが、鶏舎はほとんど臭いがしない。
鶏たちに与えているのは、有機栽培の自家製デントコーンや野菜のくず、もみ殻など。
それをほのかに醗酵させて生温かい状態で鶏に与える。
そのため鶏の糞もほとんど臭いがしない健康な糞。
その糞は田畑にすきこんで肥料となる。
この採れたて卵を翌日朝、温かいご飯にかけて食べたが、本当に濃厚でかつ優しい味がした。
ちなみに卵の黄身の色は、薄いレモン色に近かった。
順子さんから、市販されている卵の色は、実は任意で変えることができると聞いて驚いた。
飼料業者は色見本をもっており「この色にしたい」と指定すると、卵の色を変える成分が飼料に配合されるそうだ。
濃い黄色だからといって健康的な卵とは限らないわけだ。
それとは対照的に土遊野は、化学肥料や飼料などをすべて外国に頼る既存の農業からの脱却を目指している。
今後原油価格が高騰し、大豆やトウモロコシなどが品不足となることは避けられない。
食料自給率4割を切っている日本農業をどうやって再生させるのか、その方途を示している試みだ。
4ヘクタールの棚田では、アイガモ農法により米作りもしている。
蕎麦や小麦、ホウレンソウなど40種以上の野菜も育てており、すべて化学肥料や農薬を使っていない。
日本が食料危機に陥っても、この限界集落だけは大丈夫だろう。
夜は晩酌しながらご主人の秀延さんと様々なお話ができて本当に楽しかった。
経営的にも確固とした基盤を確立しつつ、有畜循環有機農業を展開する橋本さんたちの試みを全国に広げていけば、持続可能で安全・安心な食を提供する日本農業の展望が大きく開けるのではないか。
美しい自然のなかで地に足をつけた自給自足の生活にたまらない魅力を感じた。
土遊野には海外からも多くの人が研修に訪れている。
有機農業に興味のある人はぜひ一度訪れて欲しい。
民主党が歴史的大勝利を収めた総選挙。
午前中に投票を済ませ、武蔵小金井で開催された「トランジション・夏フェス! 2009」に参加。
会場を埋め尽くす多くの人が参加し、熱気溢れる討論が行われた。
5~6人毎に分かれた各テーブルで、様々なテーマを討論。
「脱クルマをどうやって実現する?」や「地域でお金と仕事を回すには?」、「文化をどう広める?」、「仲間を増やすにはどうしたらいいのか?」、「トランジションという名は分かり易い?」など、活発な討論が行われ、最後にその結果が報告された。
総じてピークオイルを見据えた低エネルギー消費コミュニティをどう実現するのかがテーマ。
ヨーロッパでは急速に広がっているローカルを起点にした動きだ。
資源やエネルギーに乏しい日本は、ピークオイルの影響を真っ先に、そして最も深刻に受ける。
だから本来なら、トランジションは国家戦略レベルで率先して取り組まれるべきものだが、残念ながらこうした問題意識は日本の政治家や官僚にはほとんどない。
アメリカのオバマ政権が国家レベルでグリーン・ニューディールを推し進めているのと比較しても、まったく立ち遅れている。
政治の立ち遅れをローカルレベルで取り戻し、地域からトランジションの動きを創り出すことができるのかどうか。
民主党政権が実現するが、自民党と同じ経済成長パラダイムで発想する限り、ピークオイルに立ち向かうことはできない。
トランジションによって新しい時代を切り拓くことができるのか、これからが正念場だ。
「移行」を意味するトランジション。
このテーマを掲げた街づくりが全世界で始まっている。
トランジション・ジャパンのウェブサイトにはこう記されている。
トランジション・タウンとは、ピークオイルと気候変動という危機を受け、市民の創意と工夫、および地域の資源を最大限に活用しながら脱石油型社会へ移行していくための草の根運動です。
パーマカルチャーおよび自然建築の講師をしていたイギリス人のロブ・ホプキンスが、2005年秋、イギリス南部デボン州の小さな町トットネスで立ち上げ、3年足らずの間にイギリス全土はもちろんのこと、欧州各国、北南米、オセアニア、そして日本と世界中に広がっています。
このお祭りが開催されるので、取材を兼ねて参加してみたい。
興味のある方はぜひどうぞ!
続きを読む: トランジション・夏フェス! 2009
今日は取材で第3回エコビレッジ国際会議TOKYOに参加。
http://begoodcafe.com/main/
メイン会場の東京ウィメンズプラザのホールには、たくさんの参加者が詰めかけていた。

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