Ecology
限界集落で有畜循環有機農業を実践する「土遊野」農場 日本農業再生の方向を見事に示唆している
2008年5月、富山県富山市(旧大沢野町)の土(ど)集落で有畜循環有機農業を営む農場「土遊野」を訪れた。
http://doyuuno.net/
食の安全・安心が求められるなか有機農業はかなり普遍的となったが、この農場のすごいところはほぼ自給自足できるような循環型農業に取り組んでいること。
農場を営んでいるのは橋本秀延さん・順子さんご夫妻。
土集落は限界集落で、ここに定住しているのは橋本さん一家だけ。
しかし「限界」とのネガティブな言葉とは裏腹に、新緑の自然がまぶしいほどに美しいまるで桃源郷のような場所だ。
午前9時半、到着と同時に早速やぎの乳搾り体験。
やぎの乳はパンパンに張っており、急いで搾ってやらなければ可愛そうだ。
あっという間に2リッタービン2本が一杯となる。
ちなみにこのやぎは農場の空き地に放し飼いとなっている。
のんびりと草を食べているが、ほぼそれだけで毎日これだけの乳が出るのだからなんと効率的。
しかもその晩の食卓で味わった手作りカッテージチーズの美味しかったこと。
汚染されていない土地に生える草を食べているからほとんど臭みもなく、かつ濃厚。
一家に一頭やぎを飼えば乳製品に困ることはないと実感できた。
土遊野では平飼いで800羽養鶏している。
その卵の採取作業をお手伝いしたが、鶏舎はほとんど臭いがしない。
鶏たちに与えているのは、有機栽培の自家製デントコーンや野菜のくず、もみ殻など。
それをほのかに醗酵させて生温かい状態で鶏に与える。
そのため鶏の糞もほとんど臭いがしない健康な糞。
その糞は田畑にすきこんで肥料となる。
この採れたて卵を翌日朝、温かいご飯にかけて食べたが、本当に濃厚でかつ優しい味がした。
ちなみに卵の黄身の色は、薄いレモン色に近かった。
順子さんから、市販されている卵の色は、実は任意で変えることができると聞いて驚いた。
飼料業者は色見本をもっており「この色にしたい」と指定すると、卵の色を変える成分が飼料に配合されるそうだ。
濃い黄色だからといって健康的な卵とは限らないわけだ。
それとは対照的に土遊野は、化学肥料や飼料などをすべて外国に頼る既存の農業からの脱却を目指している。
今後原油価格が高騰し、大豆やトウモロコシなどが品不足となることは避けられない。
食料自給率4割を切っている日本農業をどうやって再生させるのか、その方途を示している試みだ。
4ヘクタールの棚田では、アイガモ農法により米作りもしている。
蕎麦や小麦、ホウレンソウなど40種以上の野菜も育てており、すべて化学肥料や農薬を使っていない。
日本が食料危機に陥っても、この限界集落だけは大丈夫だろう。
夜は晩酌しながらご主人の秀延さんと様々なお話ができて本当に楽しかった。
経営的にも確固とした基盤を確立しつつ、有畜循環有機農業を展開する橋本さんたちの試みを全国に広げていけば、持続可能で安全・安心な食を提供する日本農業の展望が大きく開けるのではないか。
美しい自然のなかで地に足をつけた自給自足の生活にたまらない魅力を感じた。
土遊野には海外からも多くの人が研修に訪れている。
有機農業に興味のある人はぜひ一度訪れて欲しい。
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