Review
映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』が描くニーチェの「永劫回帰」 ツァラトゥストラの「超人」は可能なのか?
皮肉なことに、戦争ほど人間の生を鮮明に浮かび上がらせるものはない。
この逆説的な世界を見事に描いたのが、このアニメである。
舞台は近未来。
人類は自らの存亡に関わる世界戦争を回避するために何を選択したのか?
人々は平和の尊さをすぐに忘れ、戦争の道に入り込んでしまう。
これを避けるには、いつも戦争を身近に感じる以外ない。
そこで国連から委託された擬似戦争を請け負う民間会社が、終わることのない擬似戦争を繰り広げることになる。
擬似戦争とは言え、実際に生死を賭けた戦いが大空で繰り広げられる。
それを担うのはキルドレと呼ばれる特殊な戦士。
遺伝子操作の末に生まれた「歳をとらない子ども」たちだ。
人々は毎日テレビで映し出される彼らの戦闘を目の当たりに、キルドレ達に同情しながらも、平和の大切さを噛み締める。
このシーン、実はリアルそのものだ。
私たち自身、イラクやアフガニスタンで繰り広げられる悲惨な戦闘のニュースを見ながら、「あんな国に生まれなくてよかった」「やっぱり平和憲法が大事だよね」と、同じように感じていないだろうか?
あるいはかつての戦争体験を聞いて、「二度と戦争を繰り返してはいけない」と感じるのは、心理的には同じ作用なのではないか?
だが、そうやって自己確認するしかない「平和」って何だ?
その「平和」のなかで、私たちは本当に生きていると言えるのか?
多分、監督の押井守が語った「若い人に、生きることの意味を伝えたい」との言葉の本当に意味はここにあるだろう。
キルドレたちに許された選択肢は、戦い続けること、そしていつかは撃墜され死ぬこと以外にはない。
そして死んだとしても・・・
でも彼らは必死に生きようとする。
ラストシーンに流れるテロップは実に意味が深い。
「いつも通る道だからって、景色は同じじゃない。それだけでは、いけないのか?」
私はこの映画を観ながら、ニーチェの「永劫回帰」をモチーフにしていると感じていたが、最後のシーンでこのテロップを読んで「やっぱり」と確信した。
キルドレたちの姿、そして彼らが飛び立っていく飛行場。
そこに特攻隊の姿を重ね合わせるのは私だけではあるまい。
特攻隊に命を捧げた若者たち。
その犠牲の上に成立した戦後日本。
溢れるモノと「平和」で単調な日々に埋没し、生きる意味を見出せない若者がいるとすれば、「いつも通る道だからって、景色は同じじゃない。それだけでは、いけないのか?」との問いかけは、決して「小さな満足でいいじゃないか」との慰めではない。
「生の意味」は誰からか与えられるものではなく、自らの意志で創造するものだという、ニーチェの「超人」こそがこの映画のメッセージなのである。
それが文字通りの意味で本当に可能かどうか、私には判らないが・・・
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