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ドキュメンタリー映画『精神』 想田和弘監督の観察映画第2弾 モザイク無しに精神障害者の現実を直視

2010年7月22日 13:40 | コメント(0) | トラックバック(0)

  一言では表現できない複雑な映画である。

 想田監督はまさに、「観察映画」として精神病の患者さんたちの姿をストレートに撮っている。
 モザイクは一切なし。

 前作の『選挙』同様、ナレーションもテロップも音楽も一切ない。
 しかし2時間15分はあっと言う間に過ぎ去る。

 舞台となったのは岡山県のコラール診療所。
 わずか月給10万円で患者を診る「現代の赤ひげ」山本医師は、精神病患者の主体性をとても大切にする。

 そんな彼が精神障害者のケアを志す人たちに講演で語る。

 「紙に四角を描き、その上に丸をバランス良く三つ描いてください。質問は一切せずにとにかく書いてみてください」

 参加者が記した絵は人によって実に様々。
 四角の上に丸を書く人もいれば、四角の中に書く人もいる。
 丸の並べ方も横や縦、あるいは三角と多様だ。

 ここで山本医師は語る。

 「これが一方的コミュニケーションの限界です。とにかく本人に聞くのが一番大切だということです」

 20歳で統合失調症となり、40年以上病気と向き合っている男性はこう語る。

 「健常者にも完璧な人など一人もいない。みんなどこかおかしなところがある。私にはそれが良く分かる」

 私の友人は舞台となったコラールで働いており、日常的に映画に登場した精神障害者と向き合い、この作品にも登場した。

 その彼がこの映画に寄せた言葉は重い。
  http://actio.gr.jp/2009/04/09134859.html

 私にとってこの作品の主人公は、医療者でも介護者でもなく、次々と登場する精神障害者たち一人一人である。

 カメラを通じて、文字通り全世界に自らをさらけ出した彼らの勇気が、果たして彼らのこれからの人生にとって吉と出るのか凶と出るのか? それは分からない。

 この映画を多くの人が観ることで、精神障害者たちの置かれている状況が少しでも改善するきっかけとなるのか? それも全くわからない。

 ただ彼らは、自らが生きてきた証を、堂々とフィルムに残した。その行為の尊さが全編を通じて私の心を揺さぶり続けた。

 だがこの作品は、そんな安易な共感をも排除する。

 この映画に登場する精神障害者のうちの3名は、完成した作品を観ることもなく、自ら命を絶つなどで亡くなっている。観るものはその事実を作品の終了時に知らされることとなる。

 重い現実が再び観る者を突き放す。「こんな映画くらいで、簡単に分かったような顔をするなよ」。「あの世」からの声が聴こえるようだった。

 まずはこのドキュメンタリーを観てみることだ。

 


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渡瀬義孝 2008年洞爺湖サミットの開催に合わせ自転車で東京~洞爺湖~札幌1500キロを走破したツーリング洞爺湖に参加。持続可能な未来へ向けエコロジーでリベラルなライフスタイルを! yoshitaka@ihope.jp

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