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ドキュメンタリー映画『選挙』 想田和弘監督は世界有数の経済大国で繰り広げられるドブ板選挙をつぶさに観察

2010年7月12日 16:49 | コメント(0) | トラックバック(0)

 想田監督は自らこの作品を「観察映画」と呼ぶ。
 2時間に及ぶ作品中には、ナレーションもテロップも音楽も一切なし。
 ただひたすら、主人公である「山さん」こと山内和彦氏の選挙運動を撮り続ける。

 小泉自民党が圧勝した2005年9月の郵政選挙。
 山さんはその直後に行われた川崎市市議会補欠選挙で、自民党の公募候補となる。
 政治の素人、選挙区には何の足がかりもない落下傘候補だが、地元の自民党組織は市議会での多数派を維持する党利党略のために全面的にバックアップ。

 こうした特殊な選挙を撮り続けたがゆえに、集票マシーンとしての自民党組織の実態が見事にあぶり出されていく。
 山さんは運動会や老人体育大会、あるいは神社のお祭りなど、あらゆる行事に顔を出して名前を売り込む。
 彼の掲げる政策や能力などまったく関係なし。
 ただただ、地元選出の国会議員や県会議員、あるいは市議会議員のお墨付きがあればいいのだ。

 まさに徹頭徹尾のドブ板選挙。
 しかしこれこそ、世界有数の経済大国でながらく政権の座についていた自民党を支え続けたものなのである。

 この映画は欧米で大きな話題を呼んだが、多くの欧米人にとっては、白い手袋とたすき姿で選挙カーに乗り、あるいは駅頭に立って名前を連呼するこんな選挙スタイルは相当なカルチャーショックだったはずだ。

 ただ想田監督はこんな風にコメントしてもいる。
  http://actio.gr.jp/2007/07/21060505.html

 ただし、そんな山さんをあざ笑う感じではありませんでした。一旦は笑うけれども、「自分達の民主主義の程度はどれほど日本と違うのだ」と内省的に振りかえる論調もありました。

 ですから、「私たちは民主主義のありがたさや価値を忘れがちだが、改めてそれを思い起こさせる映画だ」との評価も受けました。皮肉もあるでしょうが、「人の振り観て我が振り直せ」といったニュアンスが込められています。

 さて、問題は当の日本人自らがこの映画を観てどう思うかだろう。
 民主主義とは何か、選挙とは何か、ぜひそれぞれの立場で考え直すいい機会となる素晴らしいドキュメンタリーである。
 ナレーション、テロップ、音楽などの余分な要素が一切無くても、2時間まったく退屈しなかった。

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