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映画『アバター(Avatar)』 キャメロン監督はヒューマニズムから環境へと大きくテーマを転換した

2010年7月 6日 21:47 | コメント(0) | トラックバック(0)

 映画『アバター』は近年にない名作である。
 ジェームス・キャメロン監督の代表的な作品、『ターミネーター2』や『タイタニック』のメインテーマはヒューマニズムであったが、明かに彼の目線は変わった。

 まさに人類が地球的規模の環境破壊に直面しているなかで、それを生み出してきた近代文明を捉え返し、持続可能性を探求する野心的な作品となっている。
 そのテーマを興行的にも成功させてしまうところがまさに天才の面目躍如。

avatar03.jpg ところが近代や物質文明そのものを根本的に捉え返すことのできないアメリカでは、トンチンカンな批判が巻き起こった。
 
  今年1月31日付読売朝刊は、「アバターは反米」とアメリカ国内で保守派が批判していると報じた。
 こうした保守派の批判に対しキャメロン監督は、「この映画は我々を反映してる。兵士は不当に戦場に送られている」と語っている。

 つまり、映画で惑星パンドラの希少鉱物を略奪するために海兵隊が送り込まれたのと同様、イラクやアフガニスタンに石油利権のために海兵隊の若者たちが送り込まれていると批判しているわけだ。

 そして忘れてはならないことは、まさに『アバター』で描かれたナヴィ(=ネィティブ)への侵略・略奪は、コロンブスによる新大陸発見以降、西洋近代が世界中で行ってきた歴史的事実そのものであることだ。

 まさにラス・カサス『インディアスの破壊についての簡潔な報告』以来、500年以上続く先住民への暴虐。

 この略奪は現在進行形でもある。
 以下のサイトで告発されている現実は、その氷山の一角でしかない。

 企業の搾取と戦う先住民族。
  http://www.realiser.org/report/lifestyle/article/index.php?id=244

 アメリカ先住民ナバホ族居留地にあった1000を超えるウラン鉱山では、素手でウラン鉱石を積んでいたナバホの労働者達のほとんどが放射線の被曝障害を患い、これに抗議して立ち上がっている。
 http://eeg.jp/EpN4

avatar2.jpg 映画『アバター』では、人類は地球のエネルギー問題の解決の鍵となる希少鉱物アンオブタニウム鉱床を確保するために躍起となる。
 これを得るために海兵隊は、ホームツリーもろとも先住民ナヴィを殺戮しようとするが、まったく同じ矛盾が実はこの地球上でも起きているのだ。

 映画では、シガニー・ウィーバー演じる植物学者が、惑星パンドラの植物が人間の脳以上の神経ネットワークを持っているとその保護を訴える。
 しかし開発会社の担当者には、自然は単なる収奪の対象でしかないから、「なんか薬でもやったのか?」とまったく取り合わない。

 山口県上関町に計画されている原発に対し、多くの生物学者が瀬戸内の貴重な生態系を破壊すると、計画見直しを提言していることに、中国電力がまったく耳をかさないのと同じだ。

 キャメロン監督がこうしたあらゆる文脈を踏まえて『アバター』を製作したことは間違いない。
 基本モチーフは完全に『風の谷にナウシカ』、そして『もののけ姫』のパクリなのも偶然ではない。
 宮崎アニメもまた、近代そのものへの鋭い問いかけを発し続けてきたからだ。

 最後に私は、この映画が心身論的にも実に興味深い内容を描いていると強調したい。
 主人公の元海兵隊員ジェイクは、下半身不随の身。
 しかしアバターという新しい肉体を得、それを通じて豊かな自然のなかで生きる喜びを体感する。

 動物や植物、仲間たちとの触れ合いと交感により、ジェイクはスピリチュアルな感覚を研ぎ澄ましていく。
 この映画の最大の魅力は、その躍動感を見事に描き出していることだろう。

avatar1.jpg 対する海兵隊は、まさに近代的な装甲に身を包み、自然と遮断されている。
 自然への畏敬の念を忘れ、ただ合理性や経済性だけを追求する人類。

 身体性やスピリチュアルな感性を喪失した文明がどれほど醜く愚かなのか。
 すべての人にその捉え返しを迫る映画である。
 

 


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