Review

ガンディーやキング牧師が目指した非暴力直接行動の奥深さを説く『暴力の哲学』(酒井隆史)

2010年7月 2日 13:53 | コメント(0) | トラックバック(0)

 本書は、国家権力の不正や横暴に対峙する民衆の「非暴力直接行動」の可能性について深く探求している。

 「お上意識」「同調圧力」の強い日本では、「話し合い」「対話」を強調する余り、権力の不正や横暴に対して「抵抗」や「反抗」をすることを忌避する傾向が強い。

 しかし欧米の社会運動では、ラディカルな非暴力直接行動によってこそ民衆のパワーが表現されている。

 例えば『文化=政治』(月曜社)のなかで毛利嘉孝氏は、1999年WTO会議開催に反対して行われたシアトルの闘争が、マスメディアが描いたような「無軌道な若者達の暴走」などではまったくなく、事前の周到な準備によって組織されていたと述べている。
 http://www.ihope.jp/2009/05/26100510.html

 欧米ではハーバーマスのような学者でさえ、必要とあらば非合法であったとしても「非暴力的抵抗」の重要性を認めている。
 なぜなら、こうした民衆の抵抗権を認めない社会は、とても民主主義とは言えないからである。

 酒井氏が紹介するマーティン・ルーサー・キングの「バーミングハムの獄中からの手紙」は象徴的だ。

 「『なぜ直接行動を、なぜ座り込みやデモ行進などを。交渉というもっと良い手段があるではないか』と、あなたがたが問われるのはもっともです。

 話し合いを要求されるという点では、あなたがたはまったく正しいのです。実に、話し合いこそが直接行動の目的とするところなのです。

 非暴力直接行動のねらいは、話し合いを絶えず拒んできた地域社会に、どうでも争点と対決せざるをえないような危機感と緊張をつくりだそうとするものです。

 それは、もはや無視できないように、争点を劇的に盛りあげようというものです」

 酒井氏はまたこうも述べている。

 「ガンディーにとって非暴力とは『和が大切』というような発想とはまったく異なります。ガンディーにとって非暴力とは『直接行動』なしには意味をもたない」

 「たとえばキングに即するならば、あるいはガンディーに即するならば、非暴力直接行動がそれ自体『ピースフル』なものであるとするイメージはまったくの誤りです。日本でイラク反戦のデモの際にしばしば見受けられた、たとえば非暴力であれば、デモ中に嫌がらせをする警察とも仲良くしなければならないというような、緊張を忌避することがなにか運動の発展に意味があるというような発想はキングとも、ガンディーともまったく無縁です」

 そしてマハトマ・ガンディーの言葉も紹介。

 「私はもちろん『直接行動』という言葉を、その語の術語的な意味に限定するものではありません。けれども、そこに直接行動的な表現なしには、非暴力はわたしの心にとって無意味です。

 それはこの世において、最も偉大な、最も行動的な力です。人は消極的に非暴力であることはできません」

 つまり、単純に暴力を否定するから非暴力なのではない。
 能動的、大衆的、効果的に争点を創り出し、権力者や支配者をして「話し合い」に応ぜざるを得ない状況に追い込み、民衆の権利を守ることが核心なのである。

 圧倒的な力を持った権力に規定され続けるのではなく、「非暴力直接行動」によって民衆が権力を逆規定する。
 歴史的に証明されているその力の偉大さを知るがゆえに、権力者はいつの時代にも、民衆の直接行動を暴力的に抑えこもうとするのだ。

 

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