Review
ベストノンフィクション『人類が消えた世界』で問われる「立つ鳥跡を濁さず」
先日、日本テレビで放映された番組「人類ZEROの世界」。
ある日突然この世界から人類が消滅したらどうなるのか、をシュミレートした番組だが、そのネタ本がこれだ。
人類が生み出している文明は人の手が入らなければわずか50年で完全に崩壊する。
世界を作り変えるなどという人間の傲慢は歴史の瞬きに過ぎないことを見事に描いている本だ。
例えば、周囲を海と川で囲まれたニューヨークのマンハッタンの地下鉄は、700個のポンプで莫大な地下水を汲み上げることでかろうじて維持されている。
その汲み上げが止まれば地下は浸水し、地下鉄どころか街全体が崩壊する。
そしてコンクリートの崩壊に比例するように森に覆われていくニューヨークには、猛獣が跋扈するようになる。
人類がいなくなれば、他の生物にとっては新たな楽園が生まれるのわけだ。
我々が依存する文明はいかに脆くはかないのか。
歴史上あらゆる文明は最後を迎えている。
現代文明だけが例外との保障はない
ただし、人類消滅後にも残り続けるものもある。
プラスチック、そして放射能。
原子炉は現代文明の巨大な墓標として何万年にも渡って放射線を出し続ける。
日本テレビの番組では、何故かチェルノブイリを取材。
世界を震撼させた1986年の事故から既に四半世紀。
周辺には植物が復活し、動物も戻っているとレポート。
これって原作の趣旨とは随分逸脱しているような・・・
いずれにしても本書に登場する古生物の研究者ダグ・アーウィンは次のように語る。
「人間はそのうち絶滅します。これまでのところ、すべてが絶滅したのですから。死と同じことです。私たちだけが違うと考える理由はありません。
しかし、生命はつづいていきます。最初は微生物かもしれない。あるいは、ムカデ類が走り回るかもしれません。やがて生物は進化し、進化をつづけます。
私たちがいようがいまいがね。いまここに存在するということは、興味深いことだと思います」
人類がどれだけ地球を破壊し、汚染しようが、必ず何からの生物は生き残り、進化を続けるだろう。
だからと言って、人類が何をしても許されるわけではない。
種としての滅亡はいずれ避けられないにしても、「立つ鳥跡を濁さず」を大切にしたいものだ。
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