Review

映画『Love Letter』死の対極にある透明な青春時代を見事に描く岩井俊二監督の処女作

2010年5月26日 23:36 | コメント(0) | トラックバック(0)

 この映画が公開されたのは1995年3月。
 その2ヶ月前、まさにこの映画のヒロインが住む神戸(実際のロケはすべて小樽で行われた)を、阪神・淡路大震災が襲った。

 亡くなった愛する者への切ない想い、残された者の心の傷の癒しと魂の再生を描いたこの映画は、期せずして阪神大震災の被災者へのレクイエムとしてつくられたかのように独特の雰囲気をかもしだしている。

 監督は本作により一躍有名となった岩井俊二。
 得てして天才型の才能は、その処女作が飛びぬけているものだが、多分彼の場合もそうだろう。

 一人二役を見事に演じたのは中山美穂。
 恥ずかしながらただのアイドルだと思っていた私は、この映画で彼女の演技力に感嘆した。

loveletter1.jpg そして何より、全編を流れるサントラが素晴らしい。
 冒頭の雪のシーン、そしてヒロインが「お元気ですか?」と、恋人が遭難した山に向かって叫ぶシーン。
 この映画の重要なシーンのバックはすべて雪景色。
 真っ白な雪景色に見事にマッチする透明なサウンドは、一度聞いたら忘れられない響きを持っている。

 雪景色だけでなく、この映画を貫いているのは「透明感」である。
 それは、亡き恋人の中学生時代の想い出を辿るシーンにもすべて共通している。

 その「透明感」は、大人になり年を重ねる毎に失っていくものだろう。
 誰もが青春時代に持っていた、世界に対する透明な感性、それをこの映画は見事に描き出している。

 だから観るものはみな、どこか甘酸っぱい、そして過ぎ去った青春を眩しいように振り返る気持ちにさせられる。

 この映画は、青春時代真っ盛りに観ても、その本当の価値は分からないだろう。
 中年から壮年、そして老人にこそ、ぜひ観てもらいたい映画だ。


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渡瀬義孝 2008年洞爺湖サミットの開催に合わせ自転車で東京~洞爺湖~札幌1500キロを走破したツーリング洞爺湖に参加。持続可能な未来へ向けエコロジーでリベラルなライフスタイルを! yoshitaka@ihope.jp

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