Review
『拒否できない日本』―アメリカの日本改造が進んでいる―(関岡英之) 年次改革要望書同様に普天間問題でまたもや明らかとなった日米関係の歪み
鳩山政権になり見直しが進む郵政民営化。
これを強引に実現しようとした小泉政権は、「構造改革」を旗印とした。
しかしその内容はことごとく、アメリカが一貫して日本に要求してきたものに過ぎない。
それを端的に示しているのが、アメリカ政府が毎年10月に日本政府に突きつけてくる『日本政府への米国政府の年次改革要望書』。
日本の産業分野ごとに、規制緩和や構造改革などの要求事項がびっしりと書き並べられた文書で、これを読めば数年後の日本を正確に予測できると言われている代物だ。
この『要望書』は、バックナンバーを含めて在日アメリカ大使館のホームページで公表されており、アメリカ政府は『要望書』の内容がどれだけ実現したのかを「成果」として毎年連邦議会で報告している。
露骨な内政干渉とも言える内容を、アメリカは日本に公文書で堂々と要求している。
問題は、これに応えて日本の国益を易々と明け渡してきた歴代の自民党政権、政治家や官僚たちだ。
『拒否できない日本』は驚くべきその実態を暴露している。
1994年以降毎年出されてきた『要望書』の中で、アメリカ側が日本に要求してきたもののうち、既に法改正や制度改正が行われた主なものは、「持ち株会社解禁」「NTT分離・分割」、「金融監督庁設置」、「時価会計」、「大規模小売店舗法の廃止」、「確定拠出年金制度」、「法科大学院」など。
いずれもアメリカ企業の日本市場への参入条件を有利にするためのものだ。
著者の関岡氏は、銀行マンを経て建築家への道を志す過程で、建築基準法の改正問題をきっかけに、アメリカの日本改造計画を知ることになる。
「建築基準法の改正は、実は阪神・淡路大震災が起きるはるか以前から決まっていたことなのである」「阪神・淡路大震災からさかのぼること六年前の一九八九年五月、アメリカは悪名高い通商法スーパー三〇一条を日本に対して発動した。このときスーパーコンピューター、人工衛星とならんで標的にされた三品目のひとつが木材、つまり建築材料だったのだ」「木材についてアメリカは、日本の建築基準法や製品規格などがアメリカ製木材の輸入を妨害していると非難した。このとき日本政府は、建築基準法は度重なる災害の教訓から日本の稿密な国土の状況に即して定められているのだから緩和する意思はないと抵抗したが、アメリカは一方的な制裁をほのめかせて圧力をかけ続けた」
結局圧力に屈した日本政府は、在米日本大使館の村田大使の名前でアメリカ通商代表部のカーラ・ヒルズ代表宛に「木材製品に関連して日本政府が講じる措置」と題した書簡を出し、「建築基準は原則として性能規定とすることが好ましい」とアメリカの要求を受け容れた。
建築家を志していた関岡氏は、次のように述懐。
「私はこれを知ったとき大変驚いた。『仕様規定』から『性能規定』への変更を主眼とする建築基準法の改正は、建築審議会が答申書で法改正を提言する七年も前に、日米両国の政府間ですでに合意されていたのだ」「もしマス・メディアに公表されないまま、こうした政府間合意がなされ、あらかじめ決められたシナリオにそって審議会の答申がつくられ、阪神・淡路大震災のどさくさに紛れて法改正までしてしまったことが事実とすれば、これは驚くべきことではないか。審議会の検討作業や国会での審議はいっさい茶番ということになりかねない。あきらかにこれはアメリカからの内政干渉だ。しかもそれが日本の審議会制度などを利用して構造的に行われていることになる」
本書の中では、建築基準法の改正にとどまらず、ありとあらゆる分野に関してアメリカが日本を構造改革しようとしてきたこと、そして今後もそれが続けられようとしていることが詳細に暴露されている。
郵政民営化についても、1996年からアメリカ政府は一貫して日本政府に要求してきた。
96年の要望書では、「郵政省のような政府機関が、民間保険会社と直接競合する保険業務に関わることを禁止」することを要請。
99年にはさらにこう要求。
「民間保険会社が提供している商品と競合する簡易保険(簡保)を含む政府及び準公共保険制度を拡大する考えをすべて中止し、現存の制度を削減または廃止すべきかどうかを検討することを強く求める」
小泉政権時代にはさらに露骨に、「米国政府は日本政府に以下の方策を取るように強く求める」として以下の要求を列挙。
「郵便保険と郵便貯金事業に、民間企業と同様の法律、規制、納税条件、責任準備金条件、基準及び規制監督を適用すること」「新規の郵便保険と郵便貯金が、その市場支配力を行使して競争を歪曲することが無いよう保証するため、独占禁止法の厳格な施行を含む適切な措置を実施する」
まさにアメリカは郵貯・簡保に眠る350兆円近い莫大な資金を吐き出させ、これを外資が食い荒らすための布石を着々と要求してきたわけだ。
鳩山政権は「対等な日米関係」を掲げて発足し、郵政民営化の見直しを進めているが、これまで対米追随により利権を得てきた官僚からの強い抵抗が存在することは想像に難くない。
普天間移設を含め、またしても「拒否できない日本」となるのか否かの瀬戸際なのである。
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