Book
『「知事抹殺」つくられた福島県汚職事件』(元福島県知事 佐藤栄佐久) 検察は政治資金規正法を濫用しマスコミはこれを煽る 日本の民主主義は根底的危機にある
住民の安全や健康を守るために、国策の不合理に真っ向から挑んだ敏腕知事は、東京地検特捜部によって抹殺された。
理由は「知事は日本にとってよろしくない」から。
本書の裏書にはこうある。
「東京一極集中に異議を唱え、原発問題、道州制などに関して政府の方針と真っ向から対立、『闘う知事』として名を馳せ、県内で圧倒的支持を得た。
第5期18年目の2006年9月、県発注のダム工事をめぐる汚職事件で追及を受け、知事辞職、その後逮捕される。
08年8月、第一審で有罪判決を受けるが、控訴」
まさにこの事件の当事者である元福島県知事佐藤栄佐久氏が自ら筆をとり、東京地検特捜部による驚くべき冤罪でっち上げの内幕を暴露している。
事件が起きる直前、日本の原発サイトで隠蔽されてきたデータ偽造などの大問題が相次いで発覚した。
これにより福島県内の原発10基も停止に追い込まれ、当時知事だった佐藤氏はプルサーマル導入を白紙にして、国と電力会社に信頼回復への努力を強く迫った。
佐藤氏は、原発の安全管理について立地自治体がなんら関与できない日本の原子力政策を批判、さらに将来的な展望なきまま進められる再処理政策は一旦立ち止まって再検討すべきと提言した。
彼は住民の安全を守る自治体首長として当然の要求を行ったに過ぎない。
そして、原発に象徴される一極集中構造を変え、地方自治体が自立可能な環境と調和するエネルギー政策を模索すべきだとの、至極真っ当な提言をしたのだ。
しかし、こうした佐藤氏のスタンスを「日本にとってよろしくない」と判断する勢力が存在したのだろう。
それは一刻も早く原発の運転を再開したい電力業界だったかもしれない。
あるいは「国策」を推し進めたい官僚たちだったかも。
いずれにしても、「日本にとってよろしくない」知事を抹殺するのに使われたのは東京地検特捜部である。
そして検察情報を垂れ流すマスコミは、見事にこの政治弾圧の片棒を担いだのだ。
私自身も自らの不明を恥ずべきである。
ながらく脱原発運動に関わりながら、この事件が起きた際に私はどう思ったのか?
「原発立地県の知事が収賄とはさもありなん。利権が渦巻いていたに違いない」
まさに検察リーク情報を鵜呑みにし、メディアコントロールされていたのだ。
本書を紐解き、佐藤氏こそ、これからの日本にとってもっとも必要な政治家の一人であったのにと、自らの不明が悔やまれる。
なんと知事時代、エネルギー政策を議論するために、福島県主催のシンポジウムをわざわざ東京で開催し、原発反対派の研究者や市民を交え議論の場をつくろうと努力していたことなどを知った。
こんな佐藤氏であればこそ、福島県政史上最多の得票で5期も知事を務められたのだろう。
しかし、民主的選挙で圧倒的な支持を得ていた知事すら、簡単に抹殺されてしまうのが現在の日本の民主主義の実態である。
東京地検特捜部が、収賄罪や政治資金規正法を振りかざして強制捜査に乗り出せば、それで政治家の政治生命は終わる。
どんな滅茶苦茶のデッチ上げであろうとも、マスコミが検察リーク情報を垂れ流せば、世論は簡単に誘導される。
本書の冒頭で佐藤氏はこう記している。
「刑事裁判では、有罪判決が確定する前には無罪が推定されるという、『無罪推定の原則』がある。しかし、私の場合、そのはるか前、特捜部の捜査からマスメディアの報道によって、すでに裁判の前に命を絶たれてしまったようなものである」
そして今まさに、戦後初の政権交代を実現した民主党の小沢幹事長へも、同様の政治弾圧がかけられている。
検察審査会の「起訴相当」の判断は、まさにマスコミが検察リーク情報を垂れ流し、「小沢=金権政治」のイメージが膨れ上がった結果だろう。
東京地検特捜部が1年間も強制捜査して起訴できなかった事件を、こんなイメージ操作に乗っかって「起訴相当」と判断すれば、法治主義そのものを根底から揺るがすことになる。
東京地検特捜部とマスコミが一体化し、政治資金規正法は「現代の治安維持法」と化している。
本書を読み、われわれはこの現実を直視しなければならない。
ジャーナリストの手嶋龍一氏は、2009年10月18日付熊本日日新聞にこんな書評を掲載している。
「これはスターリン独裁下のモスクワの出来事ではないのか―この本を手に取った読者はそんな錯覚に陥るだろう」
関連記事
- 「人類の危機」レポート『成長の限界』から40年 デニス・メドウズ氏は再度「これからの20年で人類が経験することは過去200年の変化よりも大きい」と指摘
- 地球環境問題を包括的に指摘したバイブルとも言える書『成長の限界』。 1971年...
- ガンディーやキング牧師が目指した非暴力直接行動の奥深さを説く『暴力の哲学』(酒井隆史)
- 本書は、国家権力の不正や横暴に対峙する民衆の「非暴力直接行動」の可能性について...
- ベストノンフィクション『人類が消えた世界』で問われる「立つ鳥跡を濁さず」
- 先日、日本テレビで放映された番組「人類ZEROの世界」。 ある日突然この世界か...
- 『拒否できない日本』―アメリカの日本改造が進んでいる―(関岡英之) 年次改革要望書同様に普天間問題でまたもや明らかとなった日米関係の歪み
- 鳩山政権になり見直しが進む郵政民営化。 これを強引に実現しようとした小泉政権...
- 『武道の力―人間は80歳まで強くなれる!』(時津賢児) デカルト的心身二元論をこえられるか
- 副題に「80歳まで強くなれる」とあるが、本書が意図する「強くなる」の意味は単純...
- 『「知事抹殺」つくられた福島県汚職事件』(元福島県知事 佐藤栄佐久) 検察は政治資金規正法を濫用しマスコミはこれを煽る 日本の民主主義は根底的危機にある
- 驚くべき内容の書である。 住民の安全や健康を守るために、国策の不合理に真っ...
- 無差別爆撃で10万人以上が犠牲となった東京大空襲 作戦を指揮したカーチス・ルメー将軍は戦後日本政府から勲章を授与された
- 戦時中アメリカは、日本本土への無差別爆撃を繰り返した。 首都東京も130回の空...
- 140字のつぶやきは世界を変えるきっかけになるか?『Twitter社会論』
- 政権交代と共に日本社会のあらゆる所で地殻変動が起きているのと軌を一にするかのよ...
- ジョン・デューイ『学校と社会』(4)社会を変える公共的実践知をいかに育むのか
- デューイの掲げたプラグマティズとそれに基づく教育論。 それはアメリカで広く普及...
- 『ミルの大学教育論』専門化ではなく総合教育の必要性を力説したJ.S.ミル
- 本書はJ.S.ミルが1867年セント・アンドルーズ大学に名誉学長として就任した...
トラックバック(0)
トラックバックURL: http://www.ihope.jp/mt/mt-tb.cgi/568

コメント(1)
TV雑誌の特集でこの本の存在を知り検索してきました。
この国のなんと恐ろしいことか。
私はハンドルネームと同名のブログ上でずっと「小沢氏の政治と金」は
おかしい、官僚、地検、マスコミ、大企業が大きなマトリックスのようになって
この国を巧みに操っている危険性について訴えてきました。
拙い文章ですがご一読ください
コメントする