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ヤン・リーピンの『シャングリラ』 忘れさられつつある自然への畏敬と祈りを深い哀しみのなかで舞う
中国の国宝級ダンサーであるヤン・リーピンの『シャングリラ』を観た。
近代化の波のなかで滅び行く中国雲南省の少数民族。
その伝統的な歌や舞踊を舞台化したのが『シャングリラ』。
その伝統的な歌や舞踊を舞台化したのが『シャングリラ』。
彼女は26ある少数民族の村々を訪ね歩き、伝統的な歌舞を調査・収拾すると共に、それを演じる地元の若者をスカウト。
あのままの(=原生態)少数民族の姿を舞台で再現すべく、使用する全てのものも本物にこだわっている。
彼女がそこまでこだわる理由は、実は彼女自身が雲南省の白族(ペー族)出身だから。
そして貧困と差別のなかで彼女を支えたものこそが「踊り」だった。
そして貧困と差別のなかで彼女を支えたものこそが「踊り」だった。
やはり圧巻は、彼女自身の舞「月光」。
あの舞、とりわけ手の動きの美しさはこの世のものとは思えない幻想的なもの。
あの舞、とりわけ手の動きの美しさはこの世のものとは思えない幻想的なもの。
舞台では各少数民族の伝統的な踊りや歌が続く。
自然のなかで伝統的文化を守り、コミュニティを大切にして生きてきた少数民族。
その素晴らしさと共に、それが失われていく哀しみがひしひしと伝わってきた。
自然のなかで伝統的文化を守り、コミュニティを大切にして生きてきた少数民族。
その素晴らしさと共に、それが失われていく哀しみがひしひしと伝わってきた。
シャングリラは桃源郷を意味する。
自身が生まれ育った桃源郷が失われていくことへの、ヤン・リーピンの深い哀しみがこの舞台の底流に流れている。
自身が生まれ育った桃源郷が失われていくことへの、ヤン・リーピンの深い哀しみがこの舞台の底流に流れている。
彼女は、「手つかずの大自然も、中国の急激な経済成長により失われつつあると聞きます」とのインタビューの質問にこう答えている。
それは中国だけでなく地球全土でそうですよね。わたしの村でも、一昔前まであった粉ひき用の水車がオートメーション機械にとってかわられました。かつての家族は小さなランプに火を灯して暮らしていましたが、今では電力が供給されています。まあ生活が便利になることは悪いことではないので、これは致し方のない変化なのかもしれません。ただどうしても残念なのは、村民たちの精神性が失われつつあること。たとえばかつての人々は月を仰ぎ見て「なんて明るいんだ」とその不思議な魅力にとりつかれたものです。でもいまではインターネットなどで科学的知識がすぐに得られるため、誰もが月とはなにもない不毛の平野だと知っている。
するとたとえばわたしが踊る<月光の舞>の神秘性に、共鳴する人が少なくなってしまうわけです。哀しいことです。
最初と最後の舞台に登場し、ストーリーの中心に据えられているのがチベット仏教である点も興味深い。
中国ではもっともナーバスなこのテーマに正面から触れている。
中国ではもっともナーバスなこのテーマに正面から触れている。
以前どこかのラジオで、ある有名な舞踏家のこんな話を聞いた覚えがある。
「踊る際に私は、この世界の哀しみのすべてを自分のなかに受けとめる」
まさにヤン・リーピンは現代中国、そして世界が抱える哀しみをすべて受けとめているからこそ、素晴らしい舞台を創造できるのだろう。
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