Review
無差別爆撃で10万人以上が犠牲となった東京大空襲 作戦を指揮したカーチス・ルメー将軍は戦後日本政府から勲章を授与された
戦時中アメリカは、日本本土への無差別爆撃を繰り返した。
首都東京も130回の空襲をうけたが、1945年3月10日に行われた東京大空襲は、まさに人類史上でも稀に見るホロコースト(大量虐殺)だった。
米軍は325機のB29爆撃機を動員。
約36万発の焼夷弾を東京・下町の密集地帯に投下した。
米軍はまず、町を囲む円を描くように焼夷弾を投下して炎の壁をつくった。
逃げまどう人々をそのなかに閉じ込め、逃げられないようにした上で、すべてを焼き尽くしたと言われている。
荒れ狂う炎はあっと言う間に町中を覆い尽くし、老若男女を問わず、わずか2時間半で10万人以上が犠牲となった。
当時、学徒兵として10万人の遺体の処理作業についた須田卓雄さんは、1970年12月29日付朝日新聞で自らの体験を綴った回想を発表。
あの日何が起きたのか、そのなかで人々が何を体験したのか。
決して忘れてはならない歴史の一つだ。
花があったら昭和二十年三月十日の(東京)大空襲から三日目か、四日目であったか、私の脳裏に鮮明に残っている一つの情景がある。永代橋から深川木場方面の死体取り片付け作業に従事していた私は、無数とも思われる程の遺体に慣れて、一遺体ごとに手を合わせるものの、初めに感じていた異臭にも、焼けただれた皮膚の無惨さにも、さして驚くこともなくなっていた。午後も夕方近く、路地と見られる所で発見した遺体の異様な姿態に不審を覚えた。頭髪が焼けこげ、着物が焼けて火傷の皮膚があらわなことはいずれとも変りはなかったが、倒壊物の下敷きになった方の他はうつ伏せか、横かがみ、仰向きがすべてであったのに、その遺体のみは、地面に顔をつけてうずくまっていた。着衣から女性と見分けられたが、なぜこうした形で死んだのか。その人は赤ちゃんを抱えていた。さらに、その下には大きな穴が掘られていた。母と思われる人の十本の指には血と泥がこびりつき、つめは一つもなかった。どこからか来て、もはやと覚悟して、指で固い地面を掘り、赤ちゃんを入れ、その上におおいかぶさって、火を防ぎ、わが子の生命を守ろうとしたのであろう。赤ちゃんの着物はすこしも焼けていなかった。小さなかわいいきれいな両手が母の乳房の一つをつかんでいた。だが、煙のためかその赤ちゃんもすでに息をしていなかった。わたしの周囲には十人余りの友人がいたが、だれも無言であった。どの顔も涙で汚れゆがんでいた。一人がそっとその場をはなれ、地面にはう破裂した水道管からちょろちょろこぼれるような水で手ぬぐいをぬらしてきて、母親の黒ずんだ顔を丁寧にふいた。若い顔がそこに現れた。ひどい火傷を負いながらも、息の出来ない煙に巻かれながらも、苦痛の表情は見られなかった。これは、いったいなぜだろう。美しい顔であった。人間の愛を表現する顔であったのか。だれかがいった。「花があったらなあ――」あたりは、はるか彼方まで、焼け野原が続いていた。私たちは、数え十九才の学徒兵であった。
この回想は、『写真版 東京大空襲の記録』にも収録されている。
この本は東京大空襲の惨劇を克明に描いており、当時警視庁のカメラマンだった石川光陽氏が撮影した現場写真は、息を呑むほどの衝撃を私たちに与える。
石川光陽氏がGHQの提出命令を拒否してこの数々の写真を守り続けたことが、本書の発行を可能にした。
驚くべきことに、この東京大空襲のみならず、全国諸都市の焦土作戦の直接指揮をとってカーチス・E・ルメー将軍は、1964年に天皇と日本政府から勲一等旭日大綬章を与えられている。
理由は、「日本の自衛隊の育成に貢献した」とのこと。
戦争で10万人の日本人を殺しても、日本政府から勲章がもらえる・・・
戦争と国家の本当の姿をこれほど端的に示す事実はない。
東京大空襲・戦災資料センターを訪れてみるのもお薦め。
詳細は以下のサイトを。
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