Ecology
オバマ政権が目指すグリーン・ニューディール 原発よりもスマートグリッドの開発を
オバマ大統領は、スマートグリッドと呼ばれる次世代送電網の研究開発に、日本円でおよそ3100億円を投入すると発表した。
彼が掲げるグリーン・ニューディールは、石油や石炭に依存しない太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの転換を目指すものだ。
「クリーンエネルギー経済の実現に向けた大きな動きが、今アメリカで始まっている。短期的、長期的な経済発展をこれ以上遅らせないためにも、速やかな対応が必要だ」
こう語るオバマは、持続可能なエネルギー戦略を明確に打ち出している。
今年初め、オバマ政権の誕生を受け、私は立教大学経済学部教授のアンドリュー・デウィットさんにインタビューした。
http://www.actio.gr.jp/2009/04/26060020.html
彼は金子勝氏と共に、『環境エネルギー革命』や『世界金融危機』など、経済や環境に関する共著を出し、環境エネルギー革命を目指すオバマのグリーン・ニューディールへ大きな期待を寄せている。
インタビューではスマートグリッドに関して以下のように答えていた。
「電力需要は季節や時間帯によって大きく変化します。現在の技術では電気は蓄積できませんから、既存の発電設備はその最大需要に対応して建設されています。真夏日にほとんどの家庭でクーラーを使用しても停電しないためにです。
この電力の需要と供給を上手くバランスさせることができれば、限られた電力を有効に利用することが可能です。スマート・グリッドはハード面の新たな送電線網の整備ではなく、各家庭や送電線網全体で需要と供給をバランスさせるためのソフト面の整備が基軸となります。
例えば洗濯機に洗濯物を入れたとしましょう。今すぐ洗濯する必要がないのなら、電力ネットワーク全体の需給バランスをチェックし、需要が少ない時間帯に洗濯すれば効率的です。
これを可能にするソフトをインストールした電力メーターを各家庭に導入し、その情報をネットワーク全体で双方向に流して供給もコントロールすれば、大幅な省エネが実現できるでしょう。
今後電気自動車が普及していくことは間違いありませんが、各家庭の駐車場に止めてプラグインする場合も、スマート・グリッドなら最も効率的な時間帯に充電することが可能になります。電力需要が一番高まる夕飯時を避けて深夜に充電しても、翌日の出勤時に間に合えば問題ありませんから。
深夜など需要の少ない時間帯に利用する電気料金を安く設定すれば、なおさら需給バランス効果は高まるでしょう。まさにスマート・グリッドは、既存の電力インフラを最大限効率的に利用する方法なのです」
スマートグリッドの開発を手がけているのは、GoogleやGE、IBMなどで、最新のIT技術により需要と供給のバランスを最適化し、既存の電力設備を最大限効率的に運用することを目指す。
未だに右肩上がりの電力需要の伸びを前提に、原発増設によって供給量を伸ばすことしか考えていない日本政府や電力会社の時代遅れのエネルギー戦略とは大違いだ。
アンドリュー氏はオバマ政権下での原発政策についても、こう答えていた。
「オバマは原発にはかなり消極的です。仮に原発をある程度は容認するにしても、再処理でMOX燃料を利用するのは非常に危険であると認識しています。数千トンものプルトニウムが世界中で運搬されるのは、とても危険です。海賊対策にさえ頭を悩ましているのに、プルトニウムを海上輸送するリスクはとても容認できないでしょう。
また新規に原発を建設するためには、建設地を決めて設置許可を得、そこから何年もかけて建設しなければいけません。リアクターを製造する会社の供給能力も現在は限界に近づいています。
オバマ政権が求めているのは、素早い経済効果をもつ環境対策です。原発を推進しようとしても、スピードが遅すぎてとても間に合わないのです。ですから既存の原発の運転期間が延長されることはあっても、原発が主軸となることはないでしょう」
政権与党となった民主党は、相変わらず原発推進の姿勢を変えていないが、今こそ鳴り物入りで設立された国家戦略局は、原発に依存しない新しいエネルギー戦略こそ打ち出すべきではないのか?
資源・エネルギーの乏しい日本にとって、再生可能エネルギーの開発は待ったなしの死活問題なのだから。
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