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『緒方貞子―難民支援の現場から』(1)UNHCRの歴史を変えたイラク国内クルド難民への「救済の決断」

2009年9月17日 09:40 | コメント(2) | トラックバック(0)

 緒方貞子は、1990年12月、国連総会で第8代の難民高等弁務官に選出され、2000年末までの3期10年を担った。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、国際人道機関の一つで、特に自国を追われた人々=難民の保護と救済を専門的に扱う責務が与えられている。

 予算は各国政府と民間団体の寄付で、2002年7月現在年間10億ドル、世界114カ国に286の現地事務所を有し、ジュネーブ本部と合わせて5500人が働いている。

 緒方はUNHCRの任務について次のように語った。

 「難民の代表なんですよ。二つの面があるわけです」

 「法的な保護というよりも全体的な保護なんですよね。基本的な人権といいますけれども、いちばんの基本は、安全の保障であり、それから基本的な経済社会的権利の実現です。

 それを難民というきわめて限定された状況の中でどれだけまもるかということなんですよね。守るためにはそばにいないといけない。彼らとのコミュニケーション、彼らの安心感、信頼感、それを得るためには、現場に人がいなければいけないわけです。

 もう一つ、誰に対して彼らの訴えをしていくかというと、大体は政府ですよね。難民を受け入れた庇護国の政府。難民キャンプを造ろうと思ったって、ただ行ってつくれるわけじゃありませんから、その交渉から基本的な条件づくりからやらなきゃならない」

 「そして追放した政府に対して問題の解決を交渉しなければならない」

 「国際社会において有力な国々に、支援というものを、法的にも実態的にも財政的にもすべて訴えていく」

 「この仕事につくまで、その真髄には触れたことがありませんでした」

 「問題解決型の思考を非常に強めたと思います」

Sadako.jpg

 冷戦終結後、世界中で噴き出した民族対立や内戦は、現代史上類例のない困難な難民問題を生み出した。

 クルド、ボスニア、ルワンダ、コソボ、東ティモール、アフガニスタンなど、数え上げればきりがない。
 その多くは国家間の戦争ではなく、国内紛争に起因するものである。

 民族や宗教の対立から生まれた紛争は、隣人同士の凄惨な殺し合いを生み出し、多くの人々を「強いられた移動に」駆り立てた。

 1991年1月17日、湾岸戦争が始まる。

 直接の戦闘は43日に及び、アメリカを中心とする多国籍軍がイラク軍を圧倒して終結。
 迫害されていたクルド人が武装蜂起したが、イラク軍に反撃され敗退。

 化学兵器を使っての迫害の再現を恐れて、170~180万人が難民となりイランやトルコとの国境に押し寄せた。
 140万人はイランとの国境を越えて避難した。

 問題はトルコとの国境に押し寄せた40万人が、トルコ政府から軍を動員して追い返されたことだった。

 国家を持たないクルド人は、これまでトルコ国内でも根強い独立運動を続けてきた。
 もしトルコ領内に大規模なクルド人難民キャンプができれば、国内情勢が不安定化しかねない。
 長年クルド人問題に悩まされてきたトルコ政府は、それを恐れたのだ。
 雪に覆われた荒涼たる山中に数十万人が取り残されるという危機的な事態だった。

 UNHCRの活動は、「難民条約」に基づいて行われる。
 この条約では、難民は「国境の外に出てきた人」であると定義されている。

 いかに生命の危険があるとしても、国境を越えられない以上、「難民」には該当しない。
 主権国家内の内政問題と見なされるからだ。

 したがってそれまでの常識では、イラク領内に踏み込んでクルド人を救済することは不可能だった。
 あくまで従来の慣例に従ってクルド難民を見捨てるのか。
 慣例にとらわれず救済するのか。

 救済に乗り出したとしてもイラク国内で安全が確保できる保障は何もない。
 イラク軍の攻撃を受ける危険性もある。
 
 しかし緒方は「救済の決断」を下す。
 これはUNHCRの歴史の大きな転換点になった。

 「もうそのときは切羽詰っているわけですから、軍だろうとなんだろうと、ともかく難民を物理的に保護できるものが必要だった」

 国連安全保障理事会は、「決議688」を採択し、多国籍軍とUNHCRの行動を正当化した。

 こうして問題発生から1ヵ月後の91年5月、多国籍軍が北イラクに『安全地帯』をつくってキャンプの設置を始めた。

 キャンプの設計をはじめとしてすべての作業にUNHCRのスタッフが必要とされ、緒方は、世界中の職員を招集して北イラクにはりつけた。

 初めの2週間で20万人近くが帰還し、その後も流れは続いた。
 テント、毛布、水や食料などの支援物資が、飢えと寒さに苦しむ人々に供給された。
 援助提供国は30カ国に及び、航空機200機、兵員2万人が動員された。

 国境を越えられない難民は、「国内避難民」(Internally Displaced Person、IDP)と呼ばれる。

 国内紛争が多発した90年代、国内避難民への援助の規模や範囲は一気に拡大することとなった。

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コメント(2)

yoshitakaさんに触発されてYoutubu上の緒方さんの映像(2001年1月20日放送)を観ました。

伊勢崎さんの活躍といい緒方さんの活躍といい、軍隊をも動かして人道的な活動するという側面を持っているわけですが、今まで日本の軍隊がしている支援(?)以上に成果を挙げていることには頭が下がる思いです。

難民と歩んだ10年~緒方貞子・国連難民高等弁務官~1/4
http://www.youtube.com/watch?v=9e0jpp7-4a8
難民と歩んだ10年~緒方貞子・国連難民高等弁務官~2/4
http://www.youtube.com/watch?v=sycknh3p5As
難民と歩んだ10年~緒方貞子・国連難民高等弁務官~3/4
http://www.youtube.com/watch?v=0syfWQnIEds
難民と歩んだ10年~緒方貞子・国連難民高等弁務官~4/4
http://www.youtube.com/watch?v=f3YhaVfWUsU

yum-yumさん

緒方さんの著書の紹介、まだ先がありますのでご期待を!

私も時間ができたら紹介してもらったyoutubeを観てみますね。

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渡瀬義孝 2008年洞爺湖サミットの開催に合わせ自転車で東京~洞爺湖~札幌1500キロを走破したツーリング洞爺湖に参加。持続可能な未来へ向けエコロジーでリベラルなライフスタイルを! yoshitaka@ihope.jp

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