Review
120万人もの大量虐殺を放置した欧米諸国 『ホテル・ルワンダ』が問いかけた「無関心の罪」
フランスの哲学者ポール・リクールは次のように語った。
「人の苦しみはそれを見た者に義務を負わせる」
残念ながら、欧米諸国の多くはこの義務を果たしてこなかった。
アフリカ中部ルワンダで起きた歴史的事実をもとに、欧米の掲げる「民主主義」や「人権」の欺瞞を告発したのがこの映画だ。
1994年ルワンダでは、ツチ族とフツ族が対立し、血で血を洗う武力衝突が勃発した。
フツ族の過激派は、ツチ族を皆殺しにせよとラジオ放送などを通じて民兵を煽り、女性や子どもを含めて無差別の殺戮を開始。
こうした暴力に反対するフツ族の穏健派を含めて、なんと120万人以上が虐殺された。
こうした極限的な状況の中、自らはフツ族で、ツチ族の妻をもつポール・ルセサバギナ(Paul Rusesabagina)は、苦悩しながらも英雄的な行動を貫く。
虐殺が開始された時、ホテルには欧米の観光客が宿泊し、国連の平和維持軍もホテルを警備していた。
外国のメディアクルーは、市街で繰り広げられる無差別殺戮をスクープし、それを本国の夕方のトップニュースで流すことを決定する。
それを知ったポールは安心する。
「これで世界中から助けに来てくれる」
それに対してメディアクルーはこう答える。
「人々は虐殺の映像を見て、ひどい、かわいそうと思うだろう。でもただそれだけ。彼らは何事もなかったかのように再び夕飯をとるだけだ」
その言葉通り、フランス軍はホテルに宿泊した外国人を救出しにやってきただけ。
荒れ狂う民兵に包囲されたホテルに身を寄せる人たちを置き去りにして、そのまま撤退したのである。
しかしポールは、家族や友人を含めて1200名近い人々をホテルに匿い続ける。
彼が支配人を務めるホテルは、フランス資本。
フランスにある本社に連絡をとり、当時フツ族政府軍を後押ししていたフランス政府から圧力をかけてもらう。
政府軍の将軍に賄賂を贈り、フツ族過激派のリーダーとも巧みに交渉する。
何度も絶体絶命の危機に陥るが、最後に命からがら隣国へ逃れることに成功する。
当時国連やアメリカは、ソマリア内戦へ介入して大失敗した直後だった。
ゆえに国連の平和維持軍はたった300名しか展開せず、武器使用もできない。
国連や欧米各国がもっと適切に介入していれば、何十万人もの無辜の市民が殺されることはなかったかもしれない。
しかし世界は沈黙した。
ルワンダに介入しても、何も得るところがないと判断したからだ。
石油利権を確保するためなら、イラクの民主化を掲げてフセイン政権を打倒するが、一文の得にもならない国で何十万人が殺されても無視する。
これが欧米の「民主主義」や「人権」の本当の姿なのである。
ところで2004年に製作されたこの映画は、欧米で大きな話題となった。
しかし日本では、興行的成功を望めないことを理由に当初は劇場公開すら危ぶまれた。
そんな日本は、欧米を偉そうに批判できる立場にはない。
今後日本はどのような国際貢献をできるのか。
インド洋で米軍のガソリンスタンドになるぐらいなら、もっと他にやるべきことはたくさんあるはずだ。
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コメント(3)
>国連や欧米各国がもっと適切に介入していれば、何十万人もの無辜の市民が殺されることはなかったかもしれない。
フランスがフツ側を支援し、アメリカがツチを支援してきたことに目をつむるわけにはいきません。
紛争の当事者として国連安保常任理事国であるフランスとアメリカがいたことを見逃してはなりません。
現在の世界ではイラクにアメリカが、アフガニスタンにはアメリカとヨーロッパが、ソマリアにイギリスをはじめとした日本を含む各国が介入していることこそが問題だと思います。
彼らの介入を止めるために、「介入せよ、上流で」(『人道的介入』―正義の武力行使はあるか―最上敏樹)こそが解決策だと思います。
少なくとも彼らのように紛争の当事者になってはいけないと思います。
そもそもルワンダはベルギーが植民地支配していたわけで、その時以来ツチ族とフツ族の禍根が残っていたわけです。
そうは言っても、旧宗主国であるベルギーは国連の平和維持軍として展開していました。
たった300名であっても、彼らがいなければ、恐らく映画の主人公の家族も皆殺しになっていたでしょう。
政治的背景を読み解くことと、現にあるジェノサイドをどう止めるのかは、完全に整合性を持てるわけではないと私は思います。
>政治的背景を読み解くことと、現にあるジェノサイドをどう止めるのかは、完全に整合性を持てるわけではないと私は思います。
抽象的にではなく、具体的に考えていく必要があると思います。
ここで「憲法9条」という呪文を唱えれば大丈夫であるというのはあまりにも空しい主張だと思います。
具体的に現在、世界で行なわれている虐殺行為はアフガニスタンでNATOが行なっている空爆と、ソマリアでイギリスが支援している暫定政権による市民の無差別的な虐殺があげられると思います。
両方とも国連安保常理事国が虐殺する方に加担しています。
具体的にこの虐殺行為をやめさせることが、少なくとも国連の枠組みでは不可能であるということが言えるだろうと思います。
日本が同盟国でないNATOの戦争に対して援助する「給油」(自民党案)や「(NATOの作戦である)アフガニスタン軍の育成」(現時点での民主党案)が虐殺側の当事者になることでしかないと考えているわけです。
またソマリア沖の海賊対策の海自の派遣は国際連合安全保障理事会決議1816号でうたわれているPKF軍創出にむけてなされているものです。これもソマリア暫定政権を支えるものでしかありません。
これらに国軍である自衛隊を派兵させないのは日本人にとっての上流的介入になると考えているわけです。
いい案があるなら、反対しませんが、プランを考えている人たちが紛争当事者であるので、国連による平和というのは難しい話だと思います。
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