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「年金積立金」が16兆円もの運用損 戦前の年金制度は戦費調達のためにつくられ敗戦により積立金はチャラになった
現在の日本の社会保障の基本は社会保険。年金制度も、保険料を支払った分だけ受給できる社会保険の一環だ。
社会保険庁の杜撰・怠慢が暴露されて「宙に浮いた年金」問題が噴出したが、そもそも日本の年金制度のルーツは戦費調達にあった。
政府が自由に使えるお金を確保するために生まれたわけで、最初から保険料をきちんと国民に返す気などなかったのだ。
社会保険庁の年金記録がいい加減な理由の根拠は、こうした年金制度のルーツそのものにある。
日本では1940年(昭和15年)に民間の手で初めて船員保険が作られた。
当時日中戦争は泥沼化しつつあったが、軍の徴用で物資を運ぶ船が攻撃され船員が死傷しても何の保障もなかった。
軍人には手厚い恩給制度があり、船員の不満が高まったことに対処したのだ。
翌41年には今日の厚生年金のルーツとなる労働者年金保険が開始された。
10人以上の労働者を使用する工場・鉱山・交通運輸などの男性筋肉労働者が対象の強制加入保険だ。
これが太平洋戦争真っ只中の44年(昭和19年)に厚生年金と改称され、女性と事務職員も加入。個人事業主を除くほとんどの勤労者が対象となった。
保険料は当初の1000分の64から、44年には1000分の110に増額された。
実は40年から源泉徴収制度が導入され、国民から有無を言わさず保険料を徴収するシステムが導入されていた。
その結果保険料収入は激増したが、給付はほとんどなく積立金だけが膨れ上がっていく。
この莫大な積立金のほとんどは戦費に充てられたのである。
厚生省年金局・社会保険庁『改訂厚生年金法解説』(1972年、社会保険法研究会)では、厚生年金設立の経緯を次のように語っている。
「戦時下において生産力を極度に拡充し労働力の増強確保を図る必要があり、そのための措置として要望されたこと、一方で時局下における国民の購買力の封鎖という見地から、この制度による強制貯蓄的機能が期待された」
まさに「強制貯蓄的機能」により戦費を調達するのが目的だったわけである。
実際、当時の大蔵省預金部は船員保険、厚生年金の保険料を特別会計に繰り込み、国債を購入して不足していた軍事費に充てた。
ではそれまで国民が支払った保険料はどうなったのか?
敗戦後日本は空前のインフレとなり、なんと莫大な積立金は紙切れと化したのだ。
年金の受給資格は保険料支払い20年以上だったから、ほとんどの国民は給付を受け取ることなく積立金を失った。
まさに年金制度は戦費調達のための国家的詐欺だったのだ。
ところが戦後もこの教訓は何ら活かされなかった。
またしても政府は年金の積立金を自由勝手に使ってきた。
財政投融資を通じて高速道路建設などの公共事業につぎ込まれたのである。
将来の給付に備えてきちんと管理するのではなく、恣意的に運用したのだ。
現在「年金積立金」を運用しているのは、年金積立金管理運用独立行政法人である。
しかし、この独立行政法人は大幅な運用損を出している。
08年度は9兆6670億円のマイナス、07年度は5兆8400億円のマイナスで、2年間で約16兆の運用損を出しているのだ。
国民から預かったお金を独立行政法人が勝手に運用し、目減りさせている。
しかしその責任は誰もとらない。
恐らく、こんな莫大な運用損を出しながら、この独立行政法人にも多くの官僚が天下り、ほとんど仕事もせずに給与をもらい、莫大な退職金を得ていることだろう。
140兆円近くあるはずの厚生年金の積み立て金だが、こんな状態では国民の知らないうちにカラッポになっても誰も責任をとらないだろう。
「宙に浮いた年金」どころか、積立金が目減りし、あるいは回収不能な不良債権となっていれば、再び国家的詐欺が繰り返される。
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