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映画『火垂るの墓』が問いかける戦後日本 日本は本当に豊かになったのか

2009年8月16日 19:38 | コメント(0) | トラックバック(0)

 お盆休みでアニメ映画『火垂るの墓』がテレビ放映された。
 今まで何度も見てはいたのだが、途中からだったり、最後まで見れなかったりで、今回初めて冒頭から最後までじっくり観た。

 原作は野坂昭如の小説。
 終戦の年1945年の兵庫県神戸市近郊を舞台とする、空襲で母親を亡くした幼い兄妹の物語だ。

hotaru3.jpg

 毎年8月15日の「終戦の日」前後にテレビ放映されている気がするこのアニメだが、監督の高畑勲は、「反戦アニメなどでは全くない、そのようなメッセージは一切含まれていない」と繰り返し述べたらしい。

 私は高畑のこの言葉を知らずして今回初めてフルストーリーを観たが、観ている最中からこう思っていた。

 「このアニメに込められているのは、戦争反対という単純なメッセージではない。もっと根源的な問いを発しているのではないか。日本は戦争という苦難の時代を経て、本当に豊かになったのか? 本当に幸せになったのか? 何か得るものがあったのか?」

 こう感じた理由は、主人公の兄妹を取り巻くあまりの自然の美しさにある。
 彼らは飢餓に苦しんではいるが、田には青々と稲が実り、川や池の水は澄み、海は素晴らしく美しい。 

hotaru2.jpg これはまさに、当時の日本の風景そのものだった。
 監督の高畑勲のリアリズム志向により、1945年当時の風景は忠実に再現されたようだ。

 唯一違和感を感じさせるのは、主人公が神戸港での観艦式を回想する場面だ。
 この作画に参加した庵野秀明は、当初軍艦の舷窓の数やラッタルの段数まで正確に描いたらしい。
 しかし完成した映画ではすべて影として塗りつぶされた。
 まさにこの映画は、機械文明の象徴である軍艦を、他の場面での美しい自然描写の対極として、極めてコントラストに描いたように思う。

 そんな私の漠然とした想いは、ラストシーンにおいて確信に変わった。
 それまで映画は、戦災孤児として息を引き取った主人公が亡霊になり、わずか14年の生涯を振り返ることで進行していた。
 
 最後の最後で彼は、新宿の高層ビル群を見下ろす丘の上に座っている。
 彼は戦後60年以上経った今の時代を、どんな想いで見たのか?
 それこそが、この映画の本当のテーマだろう。
 

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