Review
映画『火垂るの墓』が問いかける戦後日本 日本は本当に豊かになったのか
毎年8月15日の「終戦の日」前後にテレビ放映されている気がするこのアニメだが、監督の高畑勲は、「反戦アニメなどでは全くない、そのようなメッセージは一切含まれていない」と繰り返し述べたらしい。
私は高畑のこの言葉を知らずして今回初めてフルストーリーを観たが、観ている最中からこう思っていた。
「このアニメに込められているのは、戦争反対という単純なメッセージではない。もっと根源的な問いを発しているのではないか。日本は戦争という苦難の時代を経て、本当に豊かになったのか? 本当に幸せになったのか? 何か得るものがあったのか?」
こう感じた理由は、主人公の兄妹を取り巻くあまりの自然の美しさにある。
彼らは飢餓に苦しんではいるが、田には青々と稲が実り、川や池の水は澄み、海は素晴らしく美しい。
これはまさに、当時の日本の風景そのものだった。
監督の高畑勲のリアリズム志向により、1945年当時の風景は忠実に再現されたようだ。
唯一違和感を感じさせるのは、主人公が神戸港での観艦式を回想する場面だ。
この作画に参加した庵野秀明は、当初軍艦の舷窓の数やラッタルの段数まで正確に描いたらしい。
しかし完成した映画ではすべて影として塗りつぶされた。
まさにこの映画は、機械文明の象徴である軍艦を、他の場面での美しい自然描写の対極として、極めてコントラストに描いたように思う。
そんな私の漠然とした想いは、ラストシーンにおいて確信に変わった。
それまで映画は、戦災孤児として息を引き取った主人公が亡霊になり、わずか14年の生涯を振り返ることで進行していた。
最後の最後で彼は、新宿の高層ビル群を見下ろす丘の上に座っている。
彼は戦後60年以上経った今の時代を、どんな想いで見たのか?
それこそが、この映画の本当のテーマだろう。
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