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『機長のマネジメント』が描くクルー・リソース・マネジメント(1)スーパーエリートもミスを犯す
どんな組織であれコミュニティであれ、人間の協働が成立する場所には、必ずリーダーシップが求められる。
組織を活性化させるリーダーシップとは何か? その問いは様々な企業で問題とされ、書店などでもハウツー本が山積みだ。
『機長のマネジメント』(村上耕一 斉藤貞雄 共著 産能大学出版部)は、旅客機のコックピットにおけるリーダーシップの在り方、クルー同士の人間関係などをトータルに検証する興味深い内容だ。
言うまでもなく、何百人という乗客の生命を預かってジャンボなどの大型旅客機を操縦するパイロットは、職業的に最も高度に訓練され、たった一度の失敗も許されない責任を背負って働いている。
本書が描くクルー・リソース・マネジメント(CRM)は、この過酷なストレスのなかで極めて高度な技能を必要とされるパイロットたちが、いかにしてチームワークを保ちながらヒューマンエラーを克服するのかを課題とするもので、一般の企業運営などにも導入されている。
そもそも旅客機の操縦士たちはどのような厳しい訓練を経てエアライン・パイロットになるのか?
本書で取り上げられている全日空訓練生の一例を挙げてみよう。
まず大学卒業後に高い競争率の試験に合格して航空会社の操縦士訓練生となる。半年間の基礎座学を終えた後、アメリカで自家用操縦士と事業用操縦士のライセンスを取得。
日本に帰国して多発限定(エンジンが二つ以上ついている飛行機に乗るためのライセンス)と計器飛行証明のライセンスの座学をした後に、再びアメリカでライセンス取得。
やれやれと日本に帰国しても、息つく間もなく1年3ヶ月間は、所属する航空会社の空港事業所などで他職種研修を受ける。
これは、「会社のシステムを学ばせると共に、飛行機の運航がすべての社員の共同作業の結果であることを実感させる」ことが目的。
この他職種研修の後に、今度は訓練機を使って国内で実際の定期便運航の基礎を学び、いよいよ実用機による副操縦士訓練に入る。
全日空の場合は、新人副操縦士はボーイング767型機かエアバス320型機かのどちらかに昇格するらしく、この実技訓練を終えて初めて一人前のクルーとして旅客機の操縦席に座ることができる。
4年以上に渡る厳しい訓練の成果だが、本当のステップ・アップはこれからだ。
副操縦士から機長に昇格するには、最短で6年、最長でも10年かかるらしいのだが、そのためには「定期運送用操縦士」という最高峰のライセンス(国家試験)を取らねばならない。
さらに、これを取得したからと言って、どんな機種でもどんな便でも自由に運航できるわけではない。
機長の場合は、機種毎のライセンスの他に、各路線毎の資格認定を受けなければならない。
「これは車にたとえると、まず運転免許証を取り、次に例えばクラウンを運転するためのライセンスを取り、そしてその上自宅から会社までの運転許可証を取るようなものです。もしマーケットに買い物に行きたければ、自宅からそのマーケットまでの運転免許証を別に取得しなければならないということなのです」
こうしてやっとなれた機長の座も、それで安泰と言うわけではない。
次から次へと導入される新しいテクノロジーを吸収するためにも、すべてのパイロットには年に1回の定期訓練が課され、さらに機長には同じく年に1回の審査と半年に1回の航空身体検査が課せられている。
技術だけでなく、心身共に健康であることも、機長であり続けるための不可欠の条件となっている。
こうした厳しい自己管理と訓練性が求められることは、機長が何百人の生命を一手に預かる職業であればこそ、当然と言えば当然かも知れない。
まさに彼らは受験勉強で勝ち上がった頭でっかちの存在とは異なる、本物のスーパー・エリートである。
しかし、そんなスーパー・エリートでさえ、時に致命的なミスを犯すのである。
「どんな人間にもミスがつきものだ」と言ってしまえばそれまでだが、パイロットの重大なミスは、そのまま何百人という乗客の生命に関わる悲惨な事故に直結する。
ゆえに、この問題を解明し、解決していくために開発されたのがクルー・リソース・マネジメント(CRM)である。
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