Review

『地域通貨を知ろう』(西部忠 岩波ブックレット)市民活動のためのコミュニケーション・ツール

2009年6月24日 09:57 | コメント(0) | トラックバック(0)

 「構造改革」の名の下に、消費税が大幅にアップされようとしている。

 税金の無駄遣いは一向に減らず、国と地方自治体の借金は1000兆円を超えている。
 そのしわ寄せが、私たちの日々の生活にさらに重くのしかかってくる。

 そんな現実を前にただ嘆いたり、ぼやいたりしているだけでは意味がない。
 自分たちの手で新しい経済と暮らしの在り方、人と人とのネットワークを創り出せないか?

 小泉構造改革と並行するかのように全国に広がった地域通貨は、こんな問題意識から生まれてきた。

 本書では、ゆっくりではあっても確実に、全世界の様々なコミュニティーで普及しはじめている「地域通貨」について、わかり易く解説している。

 著者の西部忠は、北海道大学経済学部教授で、北海道をはじめとする全国の自治体や商店街などでの地域通貨の取り組みを研究し、導入アドバイザーをしている地域通貨研究の第一人者だ。

 「まえがき」で西部は次のように語っている。

 「分業・協業を基盤とする市場経済社会にとってお金は不可欠です。しかし、今日、お金が経済、社会、文化の分野でさまざまな問題を引き起こしていることもまた明らかです。今こそお金をどう改革するかを真剣に考えなければなりません」

 西部によれば、地域通貨はこんな特質をもつ。

 「より望ましい形の市場を生み出すように、既存の貨幣の長所を残しながら、できるだけその短所を取り除いた貨幣」

 現にこれまでの貨幣では媒介できない相互扶助やきめの細かなサービス、贈り物などをやりとりする手段として、地域通貨への期待が高まっている。

 地域通貨は、日本で100カ所以上、世界全体では2000カ所以上で使用されている。
 1983年にマイケル・リントンがカナダでLETS(Local Exchange Trading System)をたちあげて以降、さまざまなタイプの地域通貨が登場した。

 地域通貨は、「市民運動の支援ツール」としても活用できる。

 「市民団体が参加者の活動にたいして地域通貨によって対価を支払っていくことができれば、明確な役割と責任を求めていることができますし、参加者の責任意識もそれに応じて変わってくるはずです」

 「地域通貨は、何らかの考え方、関心、価値観を共有する人々の輪を広げるコミュニケーション・ツールでもあるわけですから、市民団体が地域通貨を自ら創り出し、それが広く一般の人にも受け入れられていけば、問題意識の伝達や共有化がはかれます」

 昨今流行のマイレージや家電量販店でのポイントなども、一種の地域通貨だろう。

 アメリカでは既に、旅客機の乗客のかなりの割合がマイレージ・サービスで占められており、航空会社の経営を圧迫している。
 これほど普及しているのに課税の対象にしないのはおかしいと議論されているぐらいだ。

 逆に言えば、もし消費税20%時代が到来しても、地域通貨を普及させ、自らの暮らしと生活を守っていくことができるかもしれない。
 地域通貨はそんな可能性をもっている。

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