Ecology
ピークオイルに直面する世界 金融危機で原油高騰は一時的におさまったが・・・
2006年1月、ダボスで開催された世界経済フォーラムにおいて、石油メジャーや中東の国営石油会社のトップ、アメリカ政府の高官や大手保険会社社長などが参加したあるシュミレーションが行われた。
世界3カ所で同時テロが発生し、4カ月以上にわたって日量数百万バレル、世界供給量の約5%の原油が不足した場合、世界経済はどうなるのかをシュミレートしたのだ。
シュミレーションの結果、原油価格は一夜にして2倍以上に跳ね上がった。
それほど原油市場は逼迫しているのである。
2001年末に1バレル=20ドル以下だった原油価格は、2008年7月に147.27ドルの最高値をつけた。
わずか8年弱で7倍以上跳ね上がったのだ。
その後世界的金融危機により原油価格は下落傾向が続いているが、それでも1バレル=70ドル前後で推移している。
現在、世界の石油需給は日々逼迫しつつある。
金融危機が世界経済を直撃する直前には、中国、インドの急激な経済成長などを要因として世界の1日の原油消費量は約8500万バレルとなり、世界全体の生産量とほぼ同水準に迫った。
多くの経済アナリストは、需給関係を早急に改善するためには、産油国が設備投資を行い、石油の生産能力を上げるべきだと考えていた。
バークレイズ・キャピタルのアナリスト、ポール・ホースネルは「資源枯渇説は関係ない。本当の問題は需給関係だ」と述べていた。
ゴールドマン・サックスのアナリスト、ジェフリー・カリーもまた、需要増に追いつくためには、石油業界は今後10年に3兆5000億ドルの投資を行わなければならないと指摘した。
しかし、原油高騰の本当の原因は石油減耗=オイルピークの到来なのだ。
早くからこの問題を指摘している石井吉徳氏(東京大学名誉教授)は、「省エネルギー」Vol. 58のなかで、「石油ピークの意味するところ」と題した緊急提言を行った。
http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/opinions/energy_cons2006.htm
石井氏はこの提言のなかで次のように問いを立てる。
「石油の価格がいま高騰している。その理由として、いろいろなことが考えられている。中国、インドなどで需要が急増し、需給が逼迫しているにもかかわらず、投資が不十分であること、ハリケーンの影響が甚大であったことなどである。その視点に立てば、高騰は一過性であり、いずれ価格は下がることになる。科学技術が進歩し、市場が機能し、投資が進めば新規油田が発見されるから大丈夫、経済成長もいつまでも続く...。本当にそうなのだろうか?」
「現実はそうではないようである。北海油田はすでに生産量のピークを迎え、OPECの主要メンバーのインドネシアですら石油の純輸入国となった、近年、大きな油田は発見されない。どうやら人類は地球の有限性に直面しているのでは、その象徴が"石油ピーク:Oil Peak"なのでは、と思われてくる」
1日約9600万バレルの原油を産出するサウジアラビア。
世界最大のガワ-ル油田は、かってEPR(Energy Profit Ratio)が60もあった。
1のエネルギーを投入すれば、60倍のエネルギーを獲得できたわけだ。
しかし既に圧力が低下して自噴せず、毎日700万バーレルの海水を注入している。
海水注入にはエネルギーが必要だから、ガワール油田のEPRはどんどん低下していくだろう。
石井氏は、そもそも産業化社会を可能にしたのは、人類が極めて高いEPRを持つエネルギー源=石油を発見したからだと指摘。
原子力や自然エネルギーを含め、石油に代わり得る高いEPRを有したエネルギー源は存在しない。
ゆえに人類に問われていることは、経済成長主義を根本的にあらためて持続可能な社会へ転換することだと訴えている。
つまり莫大な設備投資をすれば原油の生産量が増えるとする経済アナリストの主張は、すでに過去の話なのだ。
原油産出のために投入するエネルギー量よりも、産出した原油から得られるエネルギー量が多くなければ、いくら設備投資しても意味はない。
石井氏は先の提言のなかで、ある本を紹介している。
「『The Party's Over(パーティーは終わった): Oil, War And The Fate Of Industrial Societies』 (Richard Heinberg著・2003年)という本が読まれている。
その主張は明快である。石油が支えた20世紀の『浪費型パーティー』──大量生産・消費・廃棄型社会が終わる、世界各地で起こる紛争は資源獲得競争が原因と警告する。
そして、これからは"Relocalization"の時代が到来するというのである」
金融危機があろうとなかろうと、すでに人類はオイルピーク=「成長の限界」に直面している。
一刻も早く経済成長主義から脱却し、持続可能な社会へと舵を切るべきなのだ。
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