Review
鉄腕アトムが描いた牧歌的未来は『炉心融解』による世界の終わりに行き着いたのか?
『炉心融解』と題した歌が若者の間で流行っているらしい。
「核融合炉にさ 飛び込んでみたい と思う」とのショッキングな歌詞だ。
スリーマイル、そしてチェルノブイリと二度も人類が体験した原発の炉心融解事故。
この二つの事故の恐怖を実際に体験したわけではない若い世代は、実用化の目処すら立たない核融合炉にどんなイメージを抱いているのか?
核融合炉にさ 飛び込んでみたら そしたら
きっと眠るように 消えていけるんだ
僕のいない朝は 今よりずっと 素晴らしくて
全ての歯車が噛み合った きっと そんな世界だ
私は正直言ってこの歌詞にどんな意味が込められているのかは分からない。
ただ「僕」は単なる一人称ではなく、人類そのものを指すように思えてならない。
人類のいない朝は 今よりずっと 素晴らしくて
全ての歯車が噛み合った きっと そんな世界だ
今の若者たちが無意識のうちにそんな風に読み替えているとしたら・・・
少なくとも私が子ども頃、人類の未来はバラ色だった。
小学校の教科書には、光子ロケットで宇宙開発に乗り出す未来像が描かれていたものだ。
『鉄腕アトム』もまた、科学の発達、原子力が人類を幸福にするメッセージを発していた。
だから電力会社はアトムを原発PRのマスコットに利用したかったようだが、手塚治虫は最後までこれを拒否したようだ。
晩年の手塚は、原子力の未来について『鉄腕アトム』を執筆した時ほど楽観してはいなかった。
ちなみにアトムは最終回で、自ら太陽という巨大な核融合炉に飛び込んで消えたのである。
『炉心融解』
(作詞:kuma 作曲:iroha 編曲:iroha 唄:鏡音リン)
街明かり 華やか エーテル麻酔 の 冷たさ
眠れない 午前二時 全てが 急速に変わる
オイル切れのライター 焼けつくような胃の中
全てがそう嘘なら 本当に よかったのにね
君の首を締める夢を見た 光の溢れる昼下がり
君の細い喉が跳ねるのを 泣き出しそうな眼で見ていた核融合炉にさ 飛び込んでみたい と思う
真っ青な 光 包まれて奇麗
核融合炉にさ 飛び込んでみたら そしたら
すべてが許されるような気がしてベランダの向こう側 階段を昇ってゆく音
陰り出した空が 窓ガラスに 部屋に落ちる
拡散する夕暮れ 泣き腫らしたような陽の赤
融けるように少しずつ 少しずつ死んでゆく世界
君の首を絞める夢を見た 春風に揺れるカーテン
乾いて切れた唇から 零れる言葉は泡のよう核融合炉にさ 飛び込んでみたい と思う
真っ白に 記憶 融かされて消える
核融合炉にさ
飛び込んでみたら また昔みたいに
眠れるような そんな気がして時計の秒針や テレビの司会者や
そこにいるけど 見えない誰かの
笑い声 飽和して反響する耳鳴りが消えない 止まない 耳鳴りが消えない 止まない
誰もみんな消えてく夢を見た 真夜中の 部屋の広さと静寂が
胸につっかえて 上手に 息ができなくなる核融合炉にさ 飛び込んでみたら そしたら
きっと眠るように 消えていけるんだ
僕のいない朝は 今よりずっと 素晴らしくて
全ての歯車が噛み合った きっと そんな世界だ
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