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梅田望夫が希望を託した『ウェブ進化論』 日本では本当の大変化は起きなかったのか?

2009年6月11日 10:55 | コメント(0) | トラックバック(0)

 2006年6月に発表された「インターネット白書2006」では、日本のインターネット人口は7300万人を突破、一般家庭におけるブロードバンド普及率は41・4%に増加したと報告された。

 3年前ですらブログに対する認知度は98・6%、認知している人のうち25・3%が自からブログを公開していた。

 当時爆発的に普及しつつあるネット社会に関して極めてポジティブな主張を展開してベストセラーとなったのは、梅田望夫の『ウェブ進化論-本当の大変化はこれから始まる』(ちくま新書)だ。

 しかし最近梅田は、こうしたネットに関する楽観的な未来像は、日本では実現しなかったと感じているようだ。
 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/01/news045.html

 自ら取締役を務めるはてなに関してこんな発言をして批判を浴び炎上している。

 「はてブのコメントには、バカなものが本当に多すぎる」

 梅田はシリコンバレーで自らベンチャー・ビジネスを立ち上げた。
 『ウェブ進化論』ではその経験を基に、IT化によって誰もが自由に言論、芸術、文化を発信できる総表現社会が到来すると、オプティミズムに満ちた未来を語っていた。

 彼はインターネットがもたらした社会変化はまったく新しい段階に入ったとし、それを<Web2.0>と呼んだ。
 その本質をこう語っていた。

 「ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービス享受者ではなく能動的な表現者>と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢」

 そして、<Web2.0>を最先端で切り拓いているベンチャー企業として、世界的な検索エンジンのグーグルを高く評価したのである。

 「世界政府っていうものが仮にあるとして、そこで開発しなければならないはずのシステムは全部グーグルで作ろう。それがグーグル開発陣に与えられているミッション」

 梅田は、グーグルのような検索エンジンが飛躍的に進歩したことにより、玉石混交でしかなかったネット上の膨大なコンテンツを選り分け、世界的な知のヒエラルキーとも言える情報秩序を創り出すことが可能になったと主張。

 事実グーグルは自らのミッションをこう定義している。

 「世界中の情報を組織化(オーガナイズ)し、それをあまねく誰からでもアクセスできるようにすること」

梅田氏は、こうしたグーグルによる情報の組織化は、「神の視点からの世界理解」を可能とするとまで言っています。

 検索ロボットは365日24時間フルタイムでネット上の情報を収集し、30万台のコンピュータを使ってこれを分析・組織化し、知の編成を行う。
 これにより「膨大なミクロな『動き』を『全体』として把握」する。

 当時私は、梅田がポジティブに評価する「神の視点」、つまりグーグルがどのような価値観、判断基準で情報を分析・編成しているのかについて疑問を抱いた。
 これに関して梅田は、次のように述べていただけだ。

 「ウェブサイト相互に張り巡らされるリンクの関係を分析する仕組みが、グーグルの生命線たるページランク・アルゴリズムなのである」
 「リンクという民意だけに依存して知を再編成するから『民主主義』」

 グーグルはウェブ上でのリンク、つまりどれだけ多くの人々がそのページを支持しているかを元にページの検索順位を決めていくから、その理念は民主主義だと主張していた。

 だとすれば、今日梅田が語る日本のネットの現実もまた、間違いなくこうした民主主義の結果なのだ。
 まさに日本のネット上のコンテンツのレベルの低さは、日本の民主主義の質、衆愚政治そのものを表現していると言わねばならない。
  
 一方で、その衆愚政治の影でどのような事態が進行しているのか。

 例えばグーグルが中国に進出する際に、中国政府の要請に応じて「天安門事件」をNGワードに設定し、アメリカ議会で大きな問題となった。

 こうした検索エンジンのNGワードは、「言論の自由」が抑圧されている中国社会だけの問題ではない。

 『ウェブ進化論』がベストセラーとなっていた時、国際ジャーナリストである神保哲生は、NGワード問題で米国ヤフーの子会社オーバーチャの日本法人を東京地裁に訴えていた。

 ヤフーの子会社オーバーチャは、神保が社長を務めるヒデオニュース社を、「天皇」「靖国」等のNGワードによって検索連動型広告から排除したからだ。

 検索エンジンから排除されれば、そのコンテンツはネット上から消滅したに等しい。
 あるいは、排除されなくても、一度に何千、何万も出てくる検索結果の上位に入らなければ、ほとんど存在価値は無いに等しい。

 こうしたネガティブな側面を自覚しつつも梅田は、こんなバラ色の未来を夢見ていた。

 「これからは、文章、写真、語り、音楽、絵画、映像・・・ありとあらゆる表現行為について、甲子園に進むための高校野球選手権のような仕組みが、世界中すべての人に開かれているのが常態となるだろう」

 言うまでもなく、選手権の勝敗の行方を一握りの検索エンジンが握れば、世界中の言論や芸術、文化の価値の序列は簡単にコントロールされてしまう。 

 それでも当時梅田は強調した。

 「ネットの『善』の部分を直視せよ」

 しかし今日梅田は、そもそも日本のネット社会では、まともに選手権すら開けない粗悪なコンテンツばかりだと嘆いている。

 しかし考えてみれば当たり前だが、現実の社会と切り離して、ネット社会だけが発展することはあり得ない。
 自由な文化や芸術、様々な表現活動が花開かない日本を変えない限り、<Web2.0>を開花させるのは難しいだろう。
 

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