Review

映画『光州5・18』韓国では民主化運動の歴史が脈々と引き継がれている

2009年6月 9日 15:12 | コメント(0) | トラックバック(0)
 1980年韓国で光州蜂起が起きた。
 この映画は、当時軍事独裁政権に抗し民主化を求めて立ち上がった民衆の戦いを、史実に基づいて描いている。
 ゆえに冒頭、「この映画は全て真実です」とテロップが流れる。

 映画公式サイトはこちら。
  http://www.may18.jp/
 
 前年の79年、韓国では朴正煕大統領が暗殺され、当時保安司令官だった全斗煥は粛軍クーデターにより実権を掌握。
 全斗煥は後に大統領となるが、金大中氏ら野党政治家を逮捕・軟禁して戒厳令を発令した。

 これに抗議して韓国全土では民主化を求める闘いが巻き起こったが、軍事独裁政権はこれを暴力的に弾圧。

 そんななか、自ら市民軍を組織して最後まで闘い抜いたのが光州市民たちだ。


kuwanju-3.jpg しかし軍事政権は特殊部隊を投入し、何千人もの市民を虐殺した。

 

kuwanju-2.jpg 私が当時たまたま本屋で手にした雑誌『世界』では、光州事件に関する特集が組まれ、多くの知識人、文化人が抗議の声を挙げていた。

 そのなかでもとりわけ印象に残っているのは、灰谷健次郎が「苦渋に満ちて」と題して記した次の文書だ。

 「学ぶということがこれほど苦渋に満ち、身をかきむしるほどつらいものであるということを、いまさらながらに思わずにはいらねない。
 金芝河氏の『良心宣言』や金大中氏の『8・15声明』を持ち出すまでもなく、平易な言葉で語られる民衆の声が、わたしたちに人間が人間たりうる根源の意味を教える」

 こう語った灰谷は、光州虐殺に抗議して1980年6月9日に焼身自殺した若い労働者の遺書を紹介する。

 「いったい生きるとはなんであり、死ぬとはなんでありますか。1日3度、飯を食べれば生きることですか。一つの国において、自分の国の軍人によって若い学生から老人まで数百数千が血を流され、倒れ、死んでいくのに、私一人、私の家族のみが無事であればいいという考えは、いったいどこからきたのですか。若い労働者金鐘泰」 

kuwanju-4.jpg

灰谷は続ける。

 「まぎれもなく全斗煥の政権を支えたのは自民党であり、それを許したすべての政党、すべての日本人はその責任を明確にしなくてはならない」

 灰谷が指摘した通り、全斗煥政権を世界で最初に支持したのは日本政府だ。
 その後も日本は莫大な円借款により軍事政権を支え、全斗煥は1984年、戦後の韓国元首として初めて来日し昭和天皇と晩餐会を共にした。

 当時学生だった私は、こんな恥ずべき日本を許すことができなかった。
 そして同世代の韓国の学生を描いた『死を賭けた韓国学生の青春』を読み、エリートの道を断って民主化運動に命を捧げる彼らの姿に衝撃を受け、学生運動にのめり込んだ。

 あれから四半世紀が過ぎ、韓国は粘り強い民衆運動によって民主化された。
 光州蜂起を担った人々は、かつて軍事政権が宣伝したような「暴徒」ではなく、民主化を求める普通の市民だった。

 

kuwanju-1.jpg 同時に、市民軍の中心的リーダーが退役した将校だったこともこの映画で初めて知った。
 国民を守るための軍隊が、国民に銃を向けることを許さず、最後まで市民軍と命運を共にした姿に心を打たれた。

 いずれにせよ、誇るべき民衆運動の歴史が商業映画としても大成功する韓国。
 だから政治は常に熱い。
 今後日本との政治、文化の差はますます開いていくだろう。

  • Yahoo!ブックマークに登録
  • Google Bookmarksに登録
  • はてなブックマークに登録
  • del.icio.usに登録
  • livedoorクリップに登録
  • Buzzurl(バザール)に登録

関連記事

「人類の危機」レポート『成長の限界』から40年 デニス・メドウズ氏は再度「これからの20年で人類が経験することは過去200年の変化よりも大きい」と指摘
 地球環境問題を包括的に指摘したバイブルとも言える書『成長の限界』。 1971年...
docomoのケータイ補償お届けサービスでSH906iの後継機種SH-06Aをゲット やはりガラケーは便利だ
 2年ちょっと使った携帯の調子がおかしくなり、ドコモショップへ。 通話やメールに...
映画『祝の島(ほうりのしま)』分をわきまえた人間の営みこそ持続可能な未来につながる 原発よりもはるかに偉大な祝島の棚田
 30年近く中国電力の上関原発計画に反対を続けている島がある。 瀬戸内の入口、山...
映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』が描くニーチェの「永劫回帰」 ツァラトゥストラの「超人」は可能なのか?
 皮肉なことに、戦争ほど人間の生を鮮明に浮かび上がらせるものはない。 この逆説的...
映画『劔岳 点の記』 日本初の測量を実際に記録した貴重な映像があるはずだが
 日本の冬季登山で最も厳しい山と言われる剣岳。  明治時代末期、日本で最初にこの...
ドキュメンタリー映画『精神』 想田和弘監督の観察映画第2弾 モザイク無しに精神障害者の現実を直視
  一言では表現できない複雑な映画である。  想田監督はまさに、「観察...
NHKスペシャル『深層崩壊が日本を襲う』 気候変動に対応した新しい防災対策が問われている
 先日NHKスペシャルで放映されたこの番組、正直ショックを受けた。 この番組によ...
ドキュメンタリー映画『選挙』 想田和弘監督は世界有数の経済大国で繰り広げられるドブ板選挙をつぶさに観察
 想田監督は自らこの作品を「観察映画」と呼ぶ。 2時間に及ぶ作品中には、ナレーシ...
『母なる大地を守りたい ~立ち上がるアメリカ先住民~』 ウラン鉱山開発に反対するネイティブの闘いは日本の原発立地地域とまったく同じ困難を抱えている
 前編では先住民居留区での天然ガス開発に反対するシャイアンの人々や、アラスカ北極...
映画『アバター(Avatar)』 キャメロン監督はヒューマニズムから環境へと大きくテーマを転換した
 映画『アバター』は近年にない名作である。 ジェームス・キャメロン監督の代表的な...

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.ihope.jp/mt/mt-tb.cgi/175

コメントする

月別アーカイブ

プロフィール

渡瀬義孝 2008年洞爺湖サミットの開催に合わせ自転車で東京~洞爺湖~札幌1500キロを走破したツーリング洞爺湖に参加。持続可能な未来へ向けエコロジーでリベラルなライフスタイルを! yoshitaka@ihope.jp

このサイトを購読する

RSS登録

  • Add to Googleに登録
  • はてなRSSに登録
  • lvedoorリーダーに登録
Loading


最近のフォト

  • Actio 2011年12月号 特集「原発再稼働は許されない」
  • 2011年11月号 特集「広がる放射能汚染にどう向き合うか」
  • Actio10月号 特集「福島で何が起きているのか」
  • Actio 2011年9月号 特集「終わらない原発震災」
  • 2011年8月号 特集「原発事故は最悪の公害」
  • Actio 2011年7月号 特集「子どもたちを放射能から守る」
  • Actio 2011年6月号 特集「原発のない社会は可能」
  • Actio 2011年5月号特集「原発はもういらない」
  • Actio 2011年4月号 特集「食の未来を創る」
  • Actio2011年3月号 特集「エネルギーは地産地消へ」

ウェブページナビ