Review
映画『光州5・18』韓国では民主化運動の歴史が脈々と引き継がれている
この映画は、当時軍事独裁政権に抗し民主化を求めて立ち上がった民衆の戦いを、史実に基づいて描いている。
ゆえに冒頭、「この映画は全て真実です」とテロップが流れる。
映画公式サイトはこちら。
http://www.may18.jp/
前年の79年、韓国では朴正煕大統領が暗殺され、当時保安司令官だった全斗煥は粛軍クーデターにより実権を掌握。
全斗煥は後に大統領となるが、金大中氏ら野党政治家を逮捕・軟禁して戒厳令を発令した。
これに抗議して韓国全土では民主化を求める闘いが巻き起こったが、軍事独裁政権はこれを暴力的に弾圧。
そんななか、自ら市民軍を組織して最後まで闘い抜いたのが光州市民たちだ。
しかし軍事政権は特殊部隊を投入し、何千人もの市民を虐殺した。
私が当時たまたま本屋で手にした雑誌『世界』では、光州事件に関する特集が組まれ、多くの知識人、文化人が抗議の声を挙げていた。
そのなかでもとりわけ印象に残っているのは、灰谷健次郎が「苦渋に満ちて」と題して記した次の文書だ。
「学ぶということがこれほど苦渋に満ち、身をかきむしるほどつらいものであるということを、いまさらながらに思わずにはいらねない。
金芝河氏の『良心宣言』や金大中氏の『8・15声明』を持ち出すまでもなく、平易な言葉で語られる民衆の声が、わたしたちに人間が人間たりうる根源の意味を教える」
こう語った灰谷は、光州虐殺に抗議して1980年6月9日に焼身自殺した若い労働者の遺書を紹介する。
「いったい生きるとはなんであり、死ぬとはなんでありますか。1日3度、飯を食べれば生きることですか。一つの国において、自分の国の軍人によって若い学生から老人まで数百数千が血を流され、倒れ、死んでいくのに、私一人、私の家族のみが無事であればいいという考えは、いったいどこからきたのですか。若い労働者金鐘泰」
灰谷は続ける。
「まぎれもなく全斗煥の政権を支えたのは自民党であり、それを許したすべての政党、すべての日本人はその責任を明確にしなくてはならない」
灰谷が指摘した通り、全斗煥政権を世界で最初に支持したのは日本政府だ。
その後も日本は莫大な円借款により軍事政権を支え、全斗煥は1984年、戦後の韓国元首として初めて来日し昭和天皇と晩餐会を共にした。
当時学生だった私は、こんな恥ずべき日本を許すことができなかった。
そして同世代の韓国の学生を描いた『死を賭けた韓国学生の青春』を読み、エリートの道を断って民主化運動に命を捧げる彼らの姿に衝撃を受け、学生運動にのめり込んだ。
あれから四半世紀が過ぎ、韓国は粘り強い民衆運動によって民主化された。
光州蜂起を担った人々は、かつて軍事政権が宣伝したような「暴徒」ではなく、民主化を求める普通の市民だった。
同時に、市民軍の中心的リーダーが退役した将校だったこともこの映画で初めて知った。
国民を守るための軍隊が、国民に銃を向けることを許さず、最後まで市民軍と命運を共にした姿に心を打たれた。
いずれにせよ、誇るべき民衆運動の歴史が商業映画としても大成功する韓国。
だから政治は常に熱い。
今後日本との政治、文化の差はますます開いていくだろう。
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