Review
映画『グラントリノ』 クリント・イーストウッド最後の演技は「寛容と多様性」がテーマ
久しぶりに見応えのあるアメリカ映画だ。
ストーリーはおくとして、クリント・イーストウッドが自ら俳優としては最後の作品と位置づけたこの映画。
現在のアメリカの苦悩と希望の両方を象徴している。
彼が監督として2006年に発表した『父親たちの星条旗』・『硫黄島からの手紙』の2部作。
このころから私は、クリント・イーストウッドの思想に大きな変化が起きていると感じていた。
明らかにこの作品では、戦争の愚かさと、その愚かな戦争に動員されながら戦場でなんとか人間性を保とうとする兵士の苦悩を描いていたからだ。
言うまでもなく、彼の俳優としての人気を不動のものとした代表作は『ダーティハリー』。
悪と戦うためには、法律もルールも知ったことじゃない。悪い奴は有無を言わさずに叩き潰す。
これが『ダーティハリー』の世界だが、これとは全く異なるモチーフ、メッセージが発信されていた。
実は2003年に開始されたイラク戦争開戦に、彼は強く反対していた。
9・11テロ後にアメリカがのめり込んだ「テロとの戦い」。
何の罪もないイスラム教徒が敵視され、法律を無視した不当な逮捕・拘留・拷問が行われた。
ブッシュ大統領は「テロリストの側につくのか、われわれの側につくのか」と世界を恫喝し、「これは正義の戦い」だと拳を振り上げた。
まさに『ダーティハリー』の世界が現実のものとなったのだ。
これはあくまで私の想像だが、こんなヒステリックで自由と寛容を失ったアメリカに、彼は深く失望したのだろう。
同時に、自らが表現してきた『ダーティハリー』的な価値観に対して、落とし前をつける必要を感じたのではないだろうか。
だから本作では、ちゃんとその落とし前がついている。
イラク戦争の泥沼、そして世界金融危機のなかでフォードやGMなど、アメリカを代表する産業が倒産の危機にある今、アメリカはボロボロに傷ついている。
そんななかで誕生したオバマ政権。
オバマは、アメリカが本来誇っていたはずの「寛容と多様性」を回復しようとしている。
『グラントリノ』は、古き良きアメリカの再生に、クリント・イーストウッド自身が希望を託した映画だ。
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コメント(3)
土曜日はお疲れ様でした。荷台付き自転車が楽に走れるような道路が欲しいなと思いました。
「グラン・トリノ」は私も見ました。単純に、クリント・イーストウッド演じる主人公の落とし前のつけ方に、かっこよさを感じました。「体を張る」って言うのはこういうことなんですかね。新しいアメリカを担う「モン族」の若者への、言葉ではないメッセージ…。やっぱりかっこいいです。
さいたまのちば さん
土曜日は久しぶりに一緒に走れてよかったです。
『グラントリノ』の最後のシーンは、クリント・イーストウッドの俳優としての締めくくりに相応しいものでしたね。
彼は共和党支持でありながらリベラリストで、イラク戦争にも反対しました。
ある意味でもっともオーソドックスなアメリカの「保守」の立場を貫いたのかもしれません。
いずれにしても、いい映画でした。
昨日、やっと観ました。
時間が経ってから思ったことですが、フォードの社員であった彼が、人生の集大成であったはずの『グラントリノ』を「モン族」の青年に譲ったことが、象徴的な行為に思えてなりません。
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