Review

『大地動乱の時代』―地震学者は警告する―

2009年5月22日 13:43 | コメント(0) | トラックバック(0)

 関東大震災から80年以上が経過し、いつ来てもおかしくないと言われる首都直下型地震。
 さらに最近は、東海、東南海、南海地震が連動して起きる可能性も指摘されている。

 『大地動乱の時代』(岩波新書)の著者石橋克彦氏は、1970年代にプレートテクトニクス理論により、周期的に太平洋岸での巨大地震が起きることを発見した地震学者。
 本書では、既に日本は地震の活動期に入り、未曽有の原発震災が起きる危険性があると警鐘を鳴らしている。

 冒頭に記述された1923年(大正12年)の関東大震災の様子は実に生々しい。

 「9月1日、土曜日。東京付近は未明からの暴風雨が10時ごろには収まり、動きの速い雲の切れ間から真夏のような太陽が顔を出した。子供たちが二学期の始業式から戻り、あちこちの家庭で昼食のために火を使いはじめた。湿った南風がまだ強かった。

 午前11時58分31・6秒、神奈川県西部の地底でついに岩盤の大破壊が始まった。それは、たちまち巨大な亀裂となって湘南地方と相模湾の地下に拡大し、さらに房総半島までの大地の底を切り裂いた。1703年元禄関東地震以来220年間たまりつづけた南関東全域のひずみエネルギーが、激しい震動となって一挙に放出された。M7・9の関東大地震の発生である」

 「58分44秒前後には東京も揺れだした。最初は大地震とも思えないほど緩やかだったが、どんどん強くなって、約10秒後からは強烈な震動がつづいた。それがようやく少し弱まると、こんどは大船で揺られているような震動がますます大きくなり、1分たっても2分たっても止まなかった。そのうちに大余震が、ふたたび激しい衝撃をもたらした」

 「烈震と同時に随所で火の手が上がった。それは、人々が思いもつかないかたちで震災をはるかに悲惨なものにした」

 「もっとも悲惨な光景が展開したのは、本所の陸軍被服廠跡(現在の墨田区の横綱町公園~両国中学校一帯)である。

 そこは日比谷公園の四割ほどの広さ(約2万坪)の空き地だったが、絶好の避難場所とみて約4万人の人々が集まり、畳を敷き戸板を立て家財を積み上げて、露店がひしめくような状態になっていた。構内はわりあい空気が澄んで涼しく、みな安心して遠くの火事を見ていた。

 しかし、午後4時ちかく、とつぜん激しい旋風がやってきて多くの人や家財を空中高く巻き上げた。それがひとしきり荒れ狂ううちに、外からの火の粉がいっせいに降りかかり、たちまち荷物や衣服や女性の油髪が燃え上がった。

 その火がまた旋風にのって舞い上がり、渦を巻いて構内を走り、家財や群衆の上に落下して新たな炎を上げた。

 人々は絶叫しながら押し合いへし合いにぎまどったが、夕方6時前に火が鎮まったときには、焼け死んだもの、窒息死したもの、踏み殺されたもの、飛んできた焼けトタンに首を切られたもの、馬に蹴殺されたもの、赤熱したトタン掘に吹き寄せられて熱く燃えたものなど、3万8千の遺体が折り重なって構内を埋めつくした」

 まさに、激しい揺れと建物の倒壊だけでなく、火災旋風による猛火が人々を襲ったわけだ。
 この火災旋風は、来るべき地震の際にも、最も注意すべき脅威の一つだと指摘されている。

fire.jpg

  石橋氏は、次のような指摘もしている。

 「首都圏の地盤の悪さは、地震活動の激しさと同じように世界有数である。

 国際都市として東京が比較したがるニューヨークでは、約5億年前にできたコチコチの岩盤がセントラクパークに露出しており、マンハッタンの超高層ビル群はそういう堅固な岩盤の上に建てられている。

 それにたいして、東京をふくむ関東平野の半分ちかくの地盤は、約2万年前以降に海や川に堆積した砂や泥で、まだズブズブといってよい」

 東京や大阪などは、世界でも稀に見る、地震多発地帯、地盤が軟弱な上に構築された巨大都市なのだ。

 石橋氏は、「大地震に耐え抜く分散型国土をつくろう」と提起しているが、これは単に震災に備えるだけでなく、持続可能な21世紀を展望する上でも必要だと訴えている。

 「21世紀に向けて、私たち日本人も、経済至上主義を改め、農林業・沿岸漁業を復権し、地球の一部としての日本列島の環境と自然力の回復をはかり、産業・人口・情報・文化的活動などが分散した多様で永続的・安定的な国土と社会を創るべきである。そこに、個性を尊重し、世界に開いた、真に豊かで落ち着いた日本人の暮らしが築かれるべきだろう」

 2004年10月に発生した新潟県中越地震。
 そこにボランティアに入った際に、こんな話を聞いた。

 孤立した山間部の村では、畑にある野菜などはお互いに自由に採っていいと取り決めをした。
 食べ物がなければ助け合い、支え合ってしのいだのだ。

 果たして、都市を巨大地震が襲った時、私たちは互いに手を差し伸べることができるのか?

 コンクリートとアスファルトで覆われた地面からは、いざとなったら何も得られないことが、一番の問題なのかもしれない。

◆自主防災のために◆

 2005年9月1日より、地震の際の部屋の危険度をシュミレートする、「室内危険度診断システム」がWEB上で公開されている。

 このページにアクセスすれば、パソコン上の簡単なマウス操作で、自分が住んでいる室内の間取りを再現し、居住する人間の運動能力を考慮しつつ震度に応じた室内の安全箇所/避難経路をシミュレーションできる。

 http://www.hitachi-to.co.jp/products/sindan/index.html

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