Review
山田洋次監督『学校』 本当に学ぶべきは「幸せ」の探しかた
バブル崩壊直後の1993年に発表された映画だ。
日本全体が「失われた10年」の入口に立っていた。
そんな当時、社会を覆いつつあった不安や、そのなかで希望を失わずに生きようとする人々の熱い気持ちが素直に表現されている。
夜間中学の教師を天職と考える黒井役の西田敏行も、実にいい味。
生徒に本当の親のように全力で関わる姿は、あまりに出来すぎているとはいえ、やはり胸を打つものがある。
監督の山田洋次は勿論、俳優たちの胸のなかにも、役作りだけではない「社会正義」への想いが感じられる。
今の日本映画にはなかなか感じることのない熱気だ。
象徴的なのは、この映画でも描かれた不登校生徒の数が、90年代に徐々に増えていったことだ。
映画では、不登校に苦しみ夜間中学に入ったえり子役を中江有里が演じている。
中学から高校にかけての多感な時期に、学校で受験勉強しか教えられないとすれば、当然にもそこからドロップ・アウトする生徒が出る。
世間では「負け組」とされるのだろうが、実はドロップ・アウトした生徒こそ、学ぶことの意味を模索しているのだ。
この映画は、教育にとってもっとも本質的なテーマである、「なぜ学ぶのか」を問い直している。
それはまた、「人は何のために生きるのか」にもつながる深い問いかけだ。
高校時代、かなり高齢の一人暮らしの歴史の先生がいた。
学校での歴史の教え方に疑問をもった私は、友人と一緒に家に押しかけて、夜通し議論したものだ。
「歴史とは過去から学び、現代に活かすためにある。だから歴史の授業は現代史からこそ始め、徐々に過去に遡っていくべきではないか?」
「なぜ一番大切な現代史はほとんど教えずにすますのか?」
年号や人名、事件をただ羅列する、しかも受験には関係ない現代史を軽視する授業に私は苛立っていた。
そんな生意気盛りの若造を家に迎え入れ、対等に熱く論争してくれた恩師。
思い返せば、その恩師こそ一番強く記憶に残っている。
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