Review
「影の銀行システム」の損失はどれだけあるのか? 世界金融危機の闇はとめどなく深い
昨年秋、リーマンショックを発端に世界金融危機の嵐が巻き起こった。
その最中に出版された岩波ブックレット『世界金融危機』。
著者の一人である金子勝氏は、早くから未曽有の金融危機到来に警鐘を鳴らし、「悪魔の予言」と恐れられていた。
この本を読めば、世界金融危機は未だ収束していないことがよく分かる。
実際にアメリカの金融規制当局は、バンク・オブ・アメリカなど主要銀行に、合わせて7兆4000億円もの資本増強を指示した。
莫大な税金を金融機関に注ぎ込んでもなお、損失拡大に対応できないわけだ。
その理由は、この本で指摘している「影の銀行システム」にある。
「『影の銀行システム」と呼ばれる所以は、証券という本来信用創造のないものを、しかも長短の金利差を利用してぐるぐると膨らませていくことが可能な仕組みを作った点にある。一種の『錬金術』と言ってよい。これが、日本において『貯蓄から投資へ』『金融立国』というスローガンで唱道された『市場型間接金融』と呼ばれるものの実体なのである」
例えばアメリカの住宅バブルを支えたのは、NINJA(ニンジャ)ローンと呼ばれる低所得者向け住宅融資(サブプライムローン)だ。
NINJAとは、収入も仕事も資産もない、ノー・インカム、ノー・ジョブ、ノー・アセットな低所得者層のことを指す。
本来なら融資を受けられないこうした人々に、最初の数年だけ金利を低く設定する住宅ローンが大盤振る舞いされた。
年収がほとんど無い人に数億円の融資すら可能にするサブプライムローンは、極めてリスクが高い。
通常ならば銀行や投資会社は手を出さない。しかしこれが証券化され、さらにそれらを束ねた債務担保証券(CDO)として金融・証券市場に出回っていた。
どんな人がどんな条件でローンを組んだのかはブラック・ボックス化されたのである。
この本が真っ先に指摘していることは重要だ。
「『影の銀行システム』の崩壊がもたらす最大の問題は、損失が確定できない状態に陥ってしまう点にある」
恐らく世界中の誰一人として、現在の世界経済が抱える巨大な損失がどれぐらいなのか理解していないだろう。
カンフル剤のように資本増強を続けても、それがどこで打ち止めになるのか分からない恐怖。
この本の「おわりに」では、資源・エネルギー危機が迫るなかで、今や抜本的な政策転換をすべきだと訴えている。
すでにオバマ政権は、環境・エネルギー革命に大胆に舵を切っている。
にも関わらず、日本はまだ道路やダムを造り続けるのか?
限られたリソースを今後どう振り向けるのか、それが将来の日本を根本的に左右する重大な時期に、相変わらず既得権益にしがみつく政治家や官僚。
彼らに、本書の最後の言葉をぜひ噛みしめてもらいたい。
「私たちは、いま未知のリスクに直面している。それは、まだ確かな形をとっていないが、社会崩壊の危機をはらんでいる。あらゆる知恵を絞って、それを回避しなけばならない。たとえ回避できないとしても、そのリスクをできるだけ軽減するために、あらゆる努力をしなければならない。それは私たち自身のためであると同時に、将来この社会を担う若い世代のためでもあるからだ」
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