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『21世紀の経済システム展望』(ジェイムズ・ロバートソン 日本経済評論社) 今こそエコロジカル税制改革を

2009年4月21日 16:22 | コメント(0) | トラックバック(0)

 産業革命以降のわずか数百年の間に、人類は限りある地球資源を浪費し尽くそうとしている。経済成長主義から抜本的に脱却しなければ、われわれは次世代への責任を果たすことはできない。

 そもそもこれまでの経済成長を支えてきたパラダイムは、資源や環境は無尽蔵に存在することを前提に、労働によってそれに付加価値を与える、つまり価値の源泉は労働にあるとする考えだ。
 
 ゆえに資源はどんどん浪費していいから、労働生産性を上げることが至上命題とされてきた。その結果現代社会は恒常的に生産過剰、供給過剰に陥り、慢性的に労働力は余っている。

 さらに悪無限的に労働生産性の向上を目指せば、失業者や低賃金で使い捨てのパート・アルバイトはますます増大し、ワーキング・プアは深刻化する。正規雇用労働者も、人減らしのなかで過重な労働を強いられ、過労死やうつ病に追い込まれる。

 現代社会では働けば働くほど苦しく、不幸になる。このパラドックスは、労働生産性の向上こそが価値を増大させると考え続ける限り打開できないのである。

 今やこのパラダイムそのものを見直し、労働生産性ではなく環境効率性を重視する経済と社会へと構造転換することこそが必要だ。

 この点で、シュマッハー経済学を継承・発展させるニュー・エコノミックスの代表的論客の一人、イギリスの経済学者ジェイムズ・ロバートソンは『21世紀の経済システム展望』(日本経済評論社)のなかで興味深い提起を行っている。

 この本はEU委員会からの要請に応えてロバートソンが執筆した報告書の要約版だ。

 ロバートソンはまず次のように指摘。

 「自然資源の貯蔵庫と、自然のゴミ捨て場の持つ能力は、無価値で無料の財のように取り扱われてきた。価値と費用は、(労働価値説によれば)資源を採取して商品に製造加工し、それを消費者に配送し、ごみとして捨てるという人間の労働と事業からのみ生まれるものとされてきた」

 しかしこうしたパラダイムは限界にきていると、ロバートソンは続ける。

 「(これからは)自然資源を使用したり独占する人や組織は、労働と創意によって附加する価値への課税の代わりに、自然から引き出す価値に対して対価を支払うことになる」
 「環境税(エコタックス)はこれまでは『汚染者負担』の原則にもとづく、『汚染に対する課税』であると思われてきた」

 「いまでは、環境税は自然資源―汚染の吸収力であり、また資源でもある廃棄物を吸収する環境の受容能力―の使用にたいする税金として、さらに広い意味でとらえられるようになってきている」

 注目すべきなのは、彼は「環境税の権利」を主張していることだ。人間の労働によるものではない人類の「共有物」としての資源や環境については、「人間がそれを使用して利益を得る場合には、その対価を支払わなければならない」。

 つまり環境税は、共有物である資源や環境を使用している人や組織へ課税する社会全体の権利であり、ゆえにその税収は社会の構成員全員の福祉向上へ還流すべきものとなる。
 EU各国では1990年代からこうした議論が行われてきた。

 93年12月に発表された「成長と競争と雇用に関するヨーロッパ委員会白書」では、環境税収を雇用に関する課税の軽減に回すよう提言。

 95年「持続可能な発展に関する英国政府委員会報告」では、「人間が加えた価値」よりも「人間が引き出した価値」にたいして課税することに賛成している。

 今や日本でも、こうしたパラダイム・シフトを促す議論を大胆に巻き起こす時だ。
 例えば、炭素1トン当たり6000円(ガソリン1ドル当たり約4円)の炭素税が導入されれば税収は2兆円弱に達する。日本人1人当たり、平均約1万7000円の負担となる。

 この税収をEU諸国のように雇用や福祉の充実に活かすことができれば、多くの国民にとって「納税の義務」の負担感よりも、社会全体の共有物の使用に対する「課税の権利」としての側面が強く意識できるようになる。

 現行の日本のエネルギー税は特定財源となっており、各省庁の利権と密接に結びついている。環境と雇用・福祉を総合的に視野に入れたエコロジカル税制改革のためには、こうした各省庁主導の縦割行政の壁を取り払うことが必要だ。

 EUでは、縦割りの官僚機構を横断する政党、シンクタンク、NGOのコラボレーションがトータルな環境税制度案を切り開いた。
 まさにエコロジカル税制改革へ向けて日本の政党、シンクタンク、そしてNGOの力量が問われている。

 

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